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エースとルフィはコルボ山へ遊びに行き、朝ごはんの片づけと洗濯物を干し終わり、のんびりと新聞を読みながらはちみつを加えたミルクを飲めるのつかの間の休憩時間。 「なんで当たり前のようにいるかな」 「俺がいるっていうのがいいだろ?」 「出かけてどうぞ」 「も一緒ならな」 「なんであたしも」 新聞から顔を上げ向かいを睨むと、機嫌よさそうに笑うシャンクスがいた。 気付けばしれっと、まるで住人のようにシャンクスはたちの住む家に紛れ込んでいる。 時と場合によりエースやルフィの相手をしてくれて助かるが、飯を要求したりの邪魔をしたりで役に立っているようで立っていない。 最初の頃は出て行けとつまみ出していたが、懲りずに侵入してくるのでいつの間にか諦めた。 居ないものとして無視すればルフィがかまうし、ルフィとじゃれていたらエースも混ざる。二人の子供が相手にするのであれば、流石に無視するわけにもいかず、なし崩し的にこの家に居ることを認めざるを得なくなった。 今ではちゃんとシャンクスにもと同じミルクが振る舞われているので、この家での人権を獲得したといっても過言ではない。 そんな光景が当たり前のようになりつつあることに溜息をつき、また手元の新聞に視線を戻す。 * 「ん」 「ん?」 暫く新聞を読みふけっていたらしい。 シャンクスが声を上げるまで、その存在を忘れていた。 顔を上げシャンクスを見ると、両手を広げて横に立っていた。 「なに」 「来いよ」 「なんで」 「癒し」 「なんであんたが癒されんのにあたしが付き合わなきゃいけないの」 「俺じゃなくて、の」 「ない。いらない」 シャンクスの言っていることが理解できず、新聞を畳み立ち上がる。 時計を見れば、そろそろ昼食の用意をする時間だ。 カップに残っていたミルクを飲み干そうと手を伸ばすが、カップに手が届く前にシャンクスに掴まれた。 そのまま腕を引かれ、シャンクスの胸へ飛び込む形となる。 「ちょ、なにすんの!」 「まぁまぁ。休憩だよ、休憩」 「離して」 がぐっと押し返そうとしても、シャンクスの体は離れない。 こうなったら意地でも離さないので、早々に脱出を諦めた。 最初の頃は喚き怒鳴り殴り逃げ出していたが、余りにも頻繁にあるので慣れてしまった。 毎度、力ではもう敵わないという現実を突きつけられているようで、少し悔しい。 シャンクスの体温にぬくもりを感じ、ゆっくりと目を閉じる。 エースやルフィを抱きしめて思うのが、人の体温は心地いいという事だ。 シャンクスが二人の子供たちと違うのは、抱きしめるか、抱きしめられるか。 久しく忘れていたが、包み込まれるというのは、存外安心するものだなと思う。 昔はガープがよく抱きしめてくれたが、大人になってからは恥ずかしくなってしなくなった。 かといって、シャンクスに抱きしめられるのが恥ずかしくないのかと問われれば、もちろん恥ずかしい。 でも、恥ずかしさよりも心地よさと安堵感が勝ってしまう。 最初だけ抵抗するのは、シャンクスの思い通りになるのが癪なのと恥ずかしさから。 それでも、大人しく抱きしめられているうちに気持ちよくなってきて自分でも気づかないうちに、もっと抱きしめろと言わんばかりにシャンクスの腰に手を回す。 * 「んー」 胸にすり寄ってくるに、自分から言い出したものの現状に困るのがシャンクスだった。 は普段は威嚇し気を許さない山猫のようなのに、甘えだすとこちらが驚くほど甘えてくる。 甘えさすまでが難しいのは言うまでもないが、段々と多少強引に迫るというコツを覚えてきた。 現に今も最初は嫌がっていたものの、時が経てばおとなしくなり抱き返しすり寄ってくる。 自分勝手だと思う反面、そこが可愛いと思うのは惚れた弱みだ。 ずっとこんな時間が続けばいいな、と柄にもなく思ってしまう。 しかしそうもいかないのが、子持ち家庭の宿命だ。 「ほれ、ぼちぼち」 「んー」 名残惜しみながらも、夢うつつになりかけているを現実に引き戻す。 子供らに抱き合っているところを見られ、そのあと暫くが近寄らないという出来事があったばかりだ。 服にうつった体温に余韻を感じつつ、離れたがらないを引き離す。 むぅ、と若干すねた様子でこちらを見上げているものだから、堪らない。 「あいつら帰ってくんぞ。飯作るんだろ」 「うん、作る」 「あんまりくっついてるとちゅーするぞ」 「やだ」 この一言でさっさと離れていくので、まったく現金なものである。 いい加減ハグより先に進みたいと思っているが、まだまだ先か。 あるいは、ここまで許されるようになったのならあと一押しか。 でも今は、このままで。 「かーちゃーん!!」 「かーちゃんただいま!!」 「おかえりー!手ぇ洗ったらご飯だよ」 「「めしだー!!」」 たとえばこんな、大人タイム 2017/09/06 |