べろっ

ざりっ

ごっ


「うわにげぇ」

「なにすんだよっ!!!!!!!」

「うえ。汗と土埃だな、こりゃ」

「だからなにすんだっつってんだろ!」

「いちいち言わなきゃわかんねぇのかよ、ジャンは」


そこでぐっとつまるジャンに童貞っぽさを感じつつ、は苦味を消そうと唇をなめた。
二段ベットの下、ジャンがベットに腰掛けてうつむいていたのがそもそもの切っ掛けだ。

ジャンのテラコッタの髪の下、刈り上げ部分が妙に気になって、二段ベットの上からのそりと上半身だけずり落ちうなじから頭にかけて舐めあげてみた。
毎日訓練で土煙舞う格闘訓練であったり、森の中を飛び回る立体起動の訓練であったり、とにかく内容はハードだ。
それなのに風呂は隔日でしか入れない。
しかたなくかたく絞ったタオルで体を拭くしかないので、風呂に入れない日は男くさいままになる。
そんなジャンの髪の毛部分を舐めたので、当然汗と土埃の味がする。
ついでに、刈り上げ部分なのでざらざらのちくちくだ。

舐められた瞬間驚いて立ち上がってベットの上にごんと頭を打ち付けて、それでも打った頭よりも舐められた首に手を当てて唸るジャンに、足と腰だけでぶら下がっている逆さはその体制のままため息をついた。


「あんな、ジャン。15歳っつー若さを差し引いてもその反応ってどうよ」

「なんだよ、変態!」

「お前は女子か」

「うっせぇ変態!!」


悪態ばかりついた揚句、ちっと舌打ちしてベットにもぐりこんでしまった。
そんなジャンを見ながら、いや俺が15の時はもうちょっと耐性あった。つーかエロいこと興味津津だった。とゆーか色々エロいこと試したい年頃だった。と、は己の過去を振り返る。

3年前はまだ壁の中の世界は平和だった。
今から3年前の自分自身は、のんびりとエロいこと考えてられたもんなぁ。
平和だった世界の15歳と、張りつめた糸の上の15歳ではこんなに違うものなのか。
同期のエレンはまじめで熱血でお堅そうだし、アルミンは可愛くてきっと照れ屋だし、ライナーやベルベルトは…どうだろう。エロそうでもあるし、ゲイっぽい。


「でもまぁ総じて、貴重な青春を謳歌できてないんだよなぁ。俺もジャンも」


俺はちっとっぱかし遊んだけど。


「今の15歳はエロさが足りんよ、エロさが」

「エロエロ言うな、エロ魔人!!!!」

「…なぁジャンよ。エロさばかりじゃなくてボキャブラリーもいささか貧困じゃないか?」


布団にくるまったまま叫ばれた声はとてもくぐもっていたが、の声は聞こえたらしい。
うっさいホモ!ともう一度叫ばれて、ジャンは沈黙した。

だってあんまりにもジャンが童貞臭いから、からかって遊びたいのよ。

よっ、と腹筋だけでそれまでぶら下がったままだったのをベットに戻り、ベットから降りる。
沈黙しているジャンの隣にもぐりこみ、丸まっているところをぽんぽん叩いてやる。


「ふざけんなあっちいけ、ホモとエロがうつる」

「うつしてやろうか、ホモとエロ」

「ふざけんな死ね馬鹿」

「わっはっは!」


最終的には布団の隙間から飛んできた足にベットの外へ蹴落とされたが、笑ったままはそのまま眠った。





2013/05/27
モドル