「やべ、勃った」

「お前マジなんなんだよ!!!」

「朝勃ちで抜いたばっかなのに、俺わけぇwwww」

「もう頼むから死んでくれ」


立体起動適性試験日の出来事である。


「いや半勃ちだけどさ」

「なにも言うな、黙れ変態」

「つーかベルトの位置きわどすぎねぇ?これ絶対訓練中も勃つって」

「死ねよ…」


シャツの上に厚手のシャツ、オフホワイトのパンツ。
そして立体起動装備だ。
素早く多角的に動くことが求められる立体起動は、見た目の通り機動者にかなりの負荷がかかる。
負荷を少しでも軽減するために作られた装備は、立体起動装置の激しい負荷を軽減するよう体の至る所を固定する。

上半身は胸から肩にかけてベルトで締めあげ、そのベルトを背中の補助具に通す。
腰にも小型の補助具をあてがい、ズボンのベルトと胸のベルトにつなぐ。
下半身は太ももに二本、そこから膝を固め、ふくらはぎ、足首まで丁寧にベルトを巻いて立体起動の装備は完成だ。
これで体は完全に固定され、激しい負荷がかかっても全身に分散してくれる。
その上に訓練兵の刺繍がされた皮のジャケットを羽織り、ダークブラウンの腰巻をつけたら出来上がり。


「胸のベルト締めてる時ゃまだよかったんだよ。お、これなんかそーゆープレイっぽいなって」

「言うな馬鹿」

「でもよー。太もものベルト締めたら駄目だな、勃った。だってさ、太ももだぜ?しかも二本も!両足とも!!これ絶対勃つって!!」

「だから言うなつってんだろーが!!わかれよ、聞きたくないの!」


ジャンが勢いのあまりを振り返ると、目に入ってしまった。
立体起動装備はきちんと装備されているが、オフホワイトのパンツの前がくつろげられているのを。
ぞわっと背筋が粟立つ。
できるだけ正視しないようをにらみつけつつ、とっととしろと辛うじて言えた。


「おー、じゃ、ちょっくら便所ってくるわ」

「間違っても部屋の使うなよ、使ったら教官に言いつけるからな」

「男のせーりじゃん?教官も男だから、それくらいのことでわめくなってヘドバンされるのがオチだろ」


先行っといて、と腰巻を巻いて皮のジャケットを持って、にこやかには部屋を出て行った。
立体起動適性試験で落ちればいいのに、と本気で思うジャンだった。





2013/05/27
モドル