おや、と思ったのはが二度エレンの尻を触った時だった。
初めて触ったのは訓練初日。

よぉ、エレン。
うわ、か。
そーそー俺ぇー。

あいさつ代わりに軽く尻を触って、それから肩を組んだ。
夕暮れ、訓練が終わってほっと一息、夕飯の時間。
食堂へ向かう途中にエレンを見つけたから、いつものノリでやっただけだった。


「アルミンもミカサも、みんな一緒に食堂へ行こうぜ、腹減った」


その後ジャンを見つけてジャンの隣に行ったのはいいが、帰りにエレンやアルミン、ミカサに声をかけようとしたらミカサしかいなかった。
二度目は格闘訓練の時。
アニに投げられてライナーと一緒に転がされているところを触った。

おーおー、なっさけねぇなぁお二人さんよ。
ちょ、触んなよ
よしてくれ…。

ひとしきり触り倒したところでキース教官の近づく気配がしたので、二人を起こしてもう一度投げておいた。

それからだ、エレンと接触できなくなったのは。
エレンを見かけて声をかけようとしたらエレンが他人から声を掛けられてそちらに行ってしまったり、自身に声がかかったり。
最初は気付かなかったが、数日これが続けば嫌でも誰かの作為に気付く。
さてはて一体どこのどなたが自分とエレンの間に割って入るのか。
あるいはエレン自身に嫌われてしまったのか。


ちょっといいか」

「ん?」


どうやらエレンから話しかけてくるのはOKらしい。
→エレンの場合は邪魔が入る。
エレン→の場合は何もない。
つまり、事の中心はエレン?


「俺はお前になんかしたか?」

「はぁ?なんだよ、急に」

「いやー、いやー、俺もわからん」


何言ってんだ、お前。みたいな表情をされたので、たぶんエレンは俺を避けていない。
ということは、第三者が介入している。
めんどくせーなー、誰がどうしても別にいいけど、俺なんもしてねーじゃんよー、とか思っていた矢先だった。


「エレン」

「あ、ミカサ」


ミカサがとととっとエレンとの隣にやってきて、そのままそこに落ち着いた。
言い方を変えれば、エレンとの間に割って入って動こうとしない。
エレンはミカサなど気にも留めず、に話しかける。
は間にいるミカサとミカサを気にしないエレンが気になりつつも、ひとまずエレンの話を聞いた。


「っていうことだから。ちゃんと伝えたぞ」

「はいよ。ミカサちゃん待たせたな、エレンあいたぞ」


ミカサがエレンとよく一緒にいるのは知っているので、用件が終わったのでエレンを譲ってやる。
そらいけ、とエレンを促すついでに尻を触ってやろうとした瞬間だった。
さっとミカサが割り込んで、はミカサの尻を触ることになった。
男同士ならノリで許されるが、さすがに女の子の尻を触るのはまずい。


「っと、ごめんミカサちゃん」

「エレンを守れるなら、私はどうなろうとかまわない」

「は?何言ってんだよ、ミカサ。行くぞ」


エレンに手を引っ張られながら去りゆくミカサは、に向けて中指を立てていた。
一人その場に立ち尽くすは苦笑する。
両手をあげて白旗を上げると、ミカサは前を向いてエレンと一緒に歩き出した。


「オーケィ、ミカサちゃん。エレンに手はださねぇよ」





こうしてエレンの貞操は守られた。
2013/05/30
モドル