「だ、誰でもいいから助けてくれ!」



そう叫んだのは向日さんでした。
そして、それにつられたように他の方々も叫び始めました。
助けて、助けて。死にたくない。
ああなんて耳障りなのでしょう。
わたくし、なんだか嫌な気分になって参りました。



「貴方達に、それをいう資格があるのですか?」

「俺たちは、死にたくないだけだっ!!」

「助けて、という声が届くと思いなのですか?」

「現にそこに居る奴は、俺たちを助けようとしてくれている!」



石凪さんのことですね。
そうですね。
わたくしを殺す=自分を殺す奴がいなくなる
の図式ができますので、助かる望みにつながるのでしょう。



「僕は別に、貴方達を助ける気なんてありませんよ」



確かに僕は、薄野の人が貴方達を殺す前に止めるのが仕事です。
だけど、僕個人としてはいじめとか嫌いだから別にいいかなって思ったりもしてるんです。

おとなしくこの茶番に付き合ってくださっている小さな石凪さんは、きちんと受け答えをしてくださります。
そして、石凪さんのその言葉に氷帝の方たちはさっと顔を青くし、先ほどまでの雄弁はどうしたことか、一気に黙り込んでしまいました。



「助けが来るとお思いですか。厚かましい。
  貴方方は助けを呼ぶ権利なんて持ち得ません。
   いつも助けを無視して黙殺していたのは誰ですか」



氏神のお嬢様は、幾度も呼び出されては暴行を受けておられました。
そのたびにちゃんと叫んだそうですよ。
嫌だ嫌だ、助けてよ。
私は何もしてないの。お願い、信じて。みんな、信じてよ。と。



「貴方方は、真摯なその叫びの一切を切り捨てたのです。そんな貴方方の叫びに誰が耳を貸しますか。他人の一切を拒絶し、己のすべてを守るだけの自分。恥を知りなさい!」



この者たちに贖罪のチャンスを。
贖いの機会を。
さぁ、今、裁きを下しましょう。



「行きますよ、処刑のギロチン」

「ひっ」



じゃきり、と長短の刀を構えます。
そして、脅える皆様の首めがけて。



がきん
長刀である正義の剣に石凪さんの大鎌がひっかけられます。
これは、わたくしの任務を阻む、と受け取って構わないのでしょうか。



「邪魔、しないでくださいます?現在薄野部隊に与えられた任務を遂行したいのですが」

「邪魔をするのが僕のお仕事です」

「…どうしても、なのでしょうか?」

「どうしても、なんです」



「薄野部隊第一特攻隊総隊長、薄野。正義の名の下に、いざ出陣」

「石凪調査室、水玉死神、石凪萌太。いきます」