聞いて驚け!
あたしの名前は奇野
奇野だぞ、病毒使いの奇野の家計だぞ、呪い名だぞ、すごいだろ!
驚いただろー、すごいだろー!!
ふふん、しかも呪い名なんてレアだし!

あぁ、誰かに言いふらしたい!
あたしってば病毒使いのすごい子なんだぞ!って!!
でもなー、呪い名ってバレたら怒られるしなー。
触ったらばい菌がうつるー!とか嫌われたりいじめられたりしたりしたら嫌だしなー。
今日も今日とて平和に過ごすか…。
くそっ!みんなあたしのすごさに気付け!!



「で、お前は何一人百面相してんだ」

「ちちど…」

「し・し・ど!妙に噛むな!!」



うっさいなー、ちちどめ。
ちちどはちちどなんだからいいじゃん、別に。



「宿題なら見せないんだから。自分でやれよなー」

「ちげーし。今日転校生くんだってさ」

「イケメン希望!きゃー!!どうしよう、恋しよう!」



あいたっ。
叩くなよ!痛いじゃんか!!
毒移すぞ、背中がかゆくなるやつ!!

あ、なんか窓の外に車見えた。
あれか、あれか?
あの真っ赤なスポーツカーに乗って転校生登場か!
またお坊ちゃまが来るのかなー。
きゃん、玉の輿!



「おーすげー。全身真っ赤。つかあれ誰?新しいせんせーかよ?」



ん、んんん?
紅い、よ?赤いね、うん、紅い。
紅い人って珍しいよねー。
いや、どっかのちびも赤いけどさ。
それよりも赤くて紅くて、…うそん。

赤き制裁じゃん。

え、えぇぇぇええぇえええええ!!
なんで!なんで氷帝に、うちのがっこに赤き制裁がいるの!
まさかあたし!?あたしがなんかダメなことやった!?
ちょっとムカつく奴にインフルエンザかけたけど!
腹立つ先生にこっそり水虫にしたりしたけど、まさかそれじゃないよね!?
そんなちっぽけなことに砂漠の鷹さんは興味ございませんよね!



「?どうした」

「あ、あぁぁぁ、あたし、今日、帰ります!早退します!!オナカイタイです!」

「はぁ!?」



早く逃げなきゃ、逃げなきゃ!
呪い名だなんてバレたら、殺される!!
てゆーか人類最強に目をつけられたら死んでしまう!!



「おい、待てって!」

「死ねというのか!それはあたしに死ねっつーのか、バカ!」

「わけわかんねーし!」



「そうだぞー。学校なんざサボったってちーとも問題ないが、友達とつるんで馬鹿やるのはやっとけよー?」



ひぃ!
な、なななな、な、なんで!
今、いいいいいい、いま、外に、一階に居た、よね?
ここここここ、ここ、さん、か、い。



「ん?おじょーちゃん、なんか匂うな?」

「き、ききき、きのせ、です!ワタクシ、お風呂大好き、セイケツ第一でアリマス!」

「んー、こりゃ、なんだ?お前、なにもんだぁ?」

「誠心誠意、めいっぱい、普通で一般人な、ちゅーがくさんねーせーです!」



お前、マジどうしたんだよ。
うっせ、ちちど、つっこむな!
こちとりゃ死活問題じゃ!生死かかってんの!!



「名前は?」

「き、ききき…! ききの、!」

「へぇ、ききのちゃんねぇ」

「いや、お前奇野じゃん」

「お、少年さてはこのおじょーちゃんのこと好きだな?」



ちちどの馬鹿!
あたしの本名ばらすなよ!!
奇野なんてありふれた名前だけど、この人それだけで看破しちゃうかも知んないんだから!!
しかもなにじゃれあってんの!馬鹿!
この人人類最強だぞ!?
あの!哀川潤だぞ!?死ぬぞ!かかわったら死ぬぞ!!



「奇野…ねぇ。ふーん、へーえ、良い名前だなぁ、奇野ちゃぁん?」



ば・れ・た!
これ、確実にばれた!!!



「ま、いーや。いまあたしは転校生を探してんだよ。しらねーか?」

「し、ししし、ち、ちりまちぇん!」

「噛んだ!ウケル!!お前面白いなぁ!そこのお前も一緒に、ここ案内しろよ!」



これ、なんて死刑宣告!