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「うぅー、ふっ、ひく、あ、あぁーん」
泣いて泣いて、もう、声も嗄れてきた。
でも、泣くこと以外に何をしたらいいかわかんないから泣いてる。
だって、周りは森ばっかりで人っ子ひとりいない。
日があるうちは歩いてた。歩いて歩いて歩いて、歩いたけど、だーれもいない森ばっかり。
夜が来てもあたしは一人ぽっちで、足も疲れたし、悲しいし寂しいしわけわかんないしでついに泣き出した。
宍戸がいたら、みっともねーなぁって笑ってくれる。
がっくるがいたら、泣いて馬鹿みてぇってからかってくれる。
忍足がいたら、泣きぃなって一応慰めてくれる。
…あれ、あたし以外と碌な扱い受けてなくね?
でもでも、今は誰でもいいからいてほしいよぉ。
ここ、どこ、あたしさっきまで修学旅行で東北まで来てたのに。
なんでなんでぇ、なんであたしだけ迷子になっちゃったのぉ?
ばかばか、どーしてみんな迎えに来てくんないんだよ、ケータイに連絡してよ、ばかああぁぁ。うわぁああぁん。
「Hey,grill!!」
「ふぇ」
「こんな時間に、女がどうした」
「ひっひ、ひっく、わあぁぁん」
人が、いた。
あたし一人じゃ、なかった。
ううううぅぅぅ、よかったああぁぁぁ、うわあぁぁん。
こ、こわかったよぉ、あぁーん!!!
「迷子か」
「う、うん。うっく、ひっ、」
「家は」
「と、きょー。しゅがく旅行で、こ、にきた。宿は…」
………いっけね、泊まる宿なんざ覚えちゃいねぇよ、このちゃん。
だってさ、泊まる宿とかいちいち覚えないよね!?
学校の修学旅行だよ、むしろお土産とか名所とかに目が行っちゃうでしょ!?
「Ah? もちっとまともに話せ、わからねぇ」
「奇野、です。氷帝学園中等部ひっく、三年D組、奇野」
だいぶ、喋れるようになった!
でも、散々泣いたから声かすれてるし目赤いし腫れてるし、うあー、明日宍戸とかに馬鹿にされるぅー!いやーん!はっ、そして先生にも怒られる!お家にも連絡入れられて、兄貴とかにバカにされるー!いーやぁーん!は、恥ずかしっ!?これ予想以上に恥ずかしくない?迷子になって泣きわめいて、知らない人に保護されるなんて!!
あぁぁ、ちょっとおにーさん、少しはあたしのフォローしてね!
森ん中で迷子になって泣きわめいてるのを保護しましたー、なんて口が裂けても言わないでね!ね!
「あ、の!」
とりあえず森から出たいんですがー、って言おうとしたら、なにこれ?
この人馬に乗ってるよ、お馬さん!ひひーん!!
え、しかもなんか眼帯してるし、青っぽい鎧と、馬鹿みたいにでかい兜かぶっちゃってるし、え、レイヤーさん?コスプレ?コスプレに馬?
ちょまっ(笑) え(笑) ありえなくね(笑)(笑)(笑)
「あ、おい!」
そうしてあたしの視界はブラックアウト…しねぇよ、そんなマンガみたいな乙女な展開!
あぁぁぁあぁぁ!!とりあえず、逃げた!
だってわけわかんねーもん!ありえねーって!!
コスプレ?ここ京都だから馬のってもいいの!?ありえねーって、いやマジで!!
な、なんなんだよ、こんちきしょー!!!
も、森んなかで迷子になるし、変な人に会うし、今日散々歩いて足疲れたつーのにまた全力疾走だし、お腹すいたし、足痛いし、お腹すいたし、なんなんだよ、こんちきしょー!!!!
「Stop! Please cool down!」(まて、とりあえず落ち着け!)
「やあぁぁぁん!!!もーやだ、いーやぁぁあああ!!」
で、あ、れ、なんであたしジャンプしてんの、落ちてんの?
全速力で走ってたら、崖から落ちたんですが?え、うっそぉ(笑)
そして、今度こそ本当にあたしの視界はブラックアウトでした。
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