パァンと銃声が響き、硝煙が昇る。
ドタドタと慌しく足音が聞こえ、彼方此方から人間の声が聞こえる。



「そっち行ったぞ!」

「くそっ、弾が切れた!」

「相手の数が多いぞ、気を抜くな!」



どちらが不利有利かは火を見るより明らかなのが現状で、攻め込んだファミリーが苦戦していた。
守りに徹しているファミリーはここいら一帯の総元締めで、それなりの規模を持った大きなファミリーだった。
それに対し攻め込んだファミリーは中規模で人数も少なく、きちんとした島も持っていないほぼ無名に等しいファミリー。
無鉄砲もいいところだ、と総元締めのファミリーは笑っている。
人員、戦闘力、地の利、全てにおいて攻めてきたファミリーの不利。



「撃たれた、ちきしょう!!」

「おい、しっかりしろ!」

「奴らはどれだけ強いんだよ!」



終わった、と諦めたとき。
終わった、と哂ったとき。





「チャオ、これから消えるファミリーのみなさん。
ボクはドン・インペラトーレ、





ゆっくりと徒歩でやってきたドン・インペラトーレは、現在劣勢である攻めてきたファミリーのボス。
それまで戦っていたインペラトーレファミリーの者たちは歓声をあげ、
がこれから消えるといったファミリーはたかが若いボス一人、とまた笑った。



「ボクのこと歓迎してくれるの?嬉しいな」



にこり、と笑うの周りには銃を持った厳格そうな四、五人の男に囲まれていた。



「うちのファミリーに喧嘩売った命知らずのドンか」

「ドン・インペラトーレ。死んでもらおう」

「うふふ、ふふ」

「何を、ォ



の行動に苛立ちを感じた1人の男がトリガーに手をかけた瞬間、その男と共にの周りを取り囲んでいた男たちが首から血を吹き出し、血溜りを作りながら絶命した。
は顔に散った血を服のすそで拭いながら、目の前に立っている人物を見た。



「ばっかじゃないの?何敵に囲まれて笑ってんのさ」

「馬鹿は王子だよ。もう、生臭い。ボクが血塗れになっちゃったじゃん」

「あんまりにもがトロくさかったから、勝手にやらせてもらっただけ」

「・・・えい」

「・・・・・・・・・・・・・ちょっと、本気で今がどういう状況だかわかってんの?」



王子と呼ばれた人物は呆れ半分、怒り半分でを見た。
は仕返しといわんばかりに、自分についた血を王子にも擦り付ける。
そして、けらけらと笑った。
王子は率いるインペラトーレファミリーの暗殺者である。
腕は半端なく強い、トップクラスの殺し屋。



「だってー、王子だけ綺麗な顔なのムカつくんだもん。でも、これで一緒。血塗れー」



うふふ、とが笑うのと同時に、硝煙が上がった。
どさりと重量あるものが、王子との後ろで倒れる。



「王子、戦場では常に周りを気にしなさいと言ったはずですよ」

「・・・それ、に言えば?」

「ボクはちゃんとしてるよー?」



未だ熱を持つサイレンサーつきの銃を手に現れた由紗は、現状にそぐわない行動をしている王子を嗜めた。
どちらかと言えばふざけているを責めるべきなのだろうが、由紗は己が主であるに絶対指図しない。
インペラトーレの主要人物が三人揃ったところで、周りから歓声が上がった。
それに応えるよう、は優しい声音で言う。



「みんな、よくここまでもったね。もう帰っていいよ、ボクが来たから」

「「「ボス!」」」

「よくお越しくださいました!」

「我らがドン・インペラトーレ!!」



「つーか、何人死んだわけ?、そいつらに謝りなよ」

「なんで」

「今日これがあるってわかってたのに、わざわざ今日スーツ新調したでしょ。その所為で遅れたんだから、謝ってもらわなきゃホント死んだ奴報われない」

「えー、今日しないでいつすんのー?」

「昨日のうちにしとけよ」

「王子、戦場では静かに」

「またオレだけ!?」



戦場に似つかわしくない雰囲気が流れ、率いるインペラトーレはもう勝った気でいる。
それが癪に障った敵、アレーナファミリーは、一斉攻撃に乗り出した。



「じゃ、戦いたい人だけ残って各自解散」



が言い終えるか終えないかの所で、手榴弾がいくつか投げられた。
間違いなくめがけて投げられたが、はにっこりと笑うだけで何も動こうとしない。
すかさず由紗と王子がと手榴弾の間に割って入り、跳ね返した。
から遠く離れた敵陣内でそれは爆発する。
由紗と王子の目が鋭い。



「由紗」

「はい、ここに」

「王子」

「さっさと命令してよ。オレのボスはアンタなんだから」



「潰して。そして、ここをボクにちょうだい?」



が言うと、由紗と王子は深く頭を垂れた。
そして次の瞬間にはもう敵を殲滅し始めている。

敵陣中央で立つは何もしていない。

由紗が次々と拳銃で相手の脳天を打ち抜いていく。

王子が絶え間なく相手をナイフで切り刻んでいく。



「Ma nun mme lassa', nun darme stu turmiento...
Torna a Surriento: famme campa'!」



三時間後、アレーナファミリーは降伏したのにも拘らず、誰一人残すことなく壊滅させた。
由紗、王子、その他数名のインペラトーレのファミリーによって。







かえれソレントへ   2007 01 15


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