学んだのは、一般教育だけではなかった。
帝王学、人間学、医学、政治、暗殺術、護身術、武道、テーブルマナー。
他にも、様々な教養を身につけた。
いや、生憎ながら自分は凡百な頭しか持っていなかったため、
その全てを身に着けたか、と問われれば否と答える。
しかし、それぞれの要点だけはしっかりと押さえたつもりだ。
全ては、敬愛するの為に。
「あ、由紗ー。学校どだったー?」
「本日沢山学ばせていただきました」
「そー。でも助かるよー。全部ボクの代わりに授業受けてくれて」
本来、これらの教育はの為のものだった。
だが、は勉強を厭い、学を欲する由紗を身代わりにしていた。
幸いにも学校で二人の入れ替わりに気付く者はなかった。
「あーあ、なんだか勉強し始めてから堅苦しくなっちゃったね」
「これが礼儀ですので」
「由紗は真面目だね」
「全ては貴方様のために御座います」
後で聞いた話だが、の親は裏社会に組する者だった。
表向きは政界に通じる貴族。
けれどその裏でインペラトーレというマフィアの家系だと知ったのは、大分後の話だった。
由紗はその話を聞いて驚きはしたが、決してに対する思いは変わらなかった。
そればかりでなく、自分も着いて行きたいと思った。
駄目だと言われるかもしれない、拒否されるかもしれない。
だが、着いて行きたいのだ。
だったらせめて、そのための準備をしなくてはならない。
今、自分に出来る事はとても少ない。
だから、今出来る事を精一杯やっておく。
の代わりに受けているものは、
全ての親が将来に必要だろうと思って学ばせているものだ。
つまりは、裏の世界で生き抜いていくためのもの。
それらを学べば、少なくとも邪魔になることはないはずだ。
最初はの代わりに授業を受けるのが申し訳なく感じたが、
思い切って是と答えてよかった。
学ぶことはおもしろいし、新しい知識を得るのも悪くない。
それになにより、これらを学ぶことでの役に立てるかもしれないのだ。
そう考えると、自然勉強に力が入る。
のためになる事なら、なんでもやる。
辛くとも、厳しくとも、投げ出したくなっても。
そう心に決めたのは、随分と昔の事だった。
「ねぇ、由紗」
「はい」
「自分のために何かをやるのも大事だよ」
何か・・・
その何かが、のためなのだ。
のためと言いつつ、自分のためでもある。
少しでも長くと一緒に居たくて、ずっと一緒に居たくて。
そのために、頑張っているのだ。
「いいえ、ちゃんと自分のためもやっております」
言うと、そっか、とは頷いた。
「じゃあ帰ろ」
「はい」
差し出されたの手を握れば、やっぱり温かくて。
また明日も頑張ろうと思った。
この温もりを手放さないために。
2006 03 24
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