「由紗ぁー」

「はい」

「ちゅーしよっかー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・お好きなようになさってください」



はい、ちゅー。
は由紗に子供みたいな触れるだけのキスをした。
由紗は慣れているらしく、易々との要望に応えた。
しかし、実際はそんな落ち着いたものではなかった。
気を緩めれば赤らむ顔、逸る心臓。
それらを隠し、平静を装うのはとても大変だった。



「うんうん、由紗は毎度の事ながら可愛いなー。それで隠してるつもり?バレバレだよ」



ぱっと顔を離し、は満足そうに笑う。
照れ隠しに顔を背けながら、由紗はありがとうございます、とぼそりとつぶやいた。
そんな由紗を見ながら、は続ける。



「ね、由紗。由紗ってボクの事好きでしょ?」

「貴方以外に誰を慕えと?」

「だよねー。うん、由紗は素直で大変宜しい!」



よしよし、とは由紗を撫でた。
由紗はされるがままになる。
あまり感情を表に出さない由紗の顔は、無表情ながらも嬉しい、と語っていた。
はそんな由紗の事をよくわかっている。
正反対だな、と比較した。

本当に、あの素直じゃない子供とは正反対だ。



「懐かしいなぁ、初めて由紗とちゅーしたのはいつだっけ?」



由紗はばつが悪そうに顔を背ける。
判り易いところは似ているのに。



「確かボクが眠り姫で、由紗が王子様だったんだよね」

「嘘仰い、起きてらしたくせに」

「んー?ホントに寝てたんだよー?」



由紗が眠っているに了承も得ずキスをしたのは、もう随分と昔の話である。
何も言い返せない由紗を見ながら、はそっと呟いた。



「由紗もヒバリも、どうせなら起きてるボクにしたらいいのに。つまんないの」



ぼそりと呟いた言葉は、由紗には聞こえない。
は窓の外の空を見上げた。

今度があればこっちからしてやろうかな。

今度があれば、ね。とは心の中で言った。
海を越え、国境を越えた遠い地に居る相手に向けて。





2006 11 05


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