お子さま行進曲



「お前髪伸びたなァ」


う?と、が振り返ると同時に、伸びた髪も頭の動きに合わせて揺れる。
ここ最近は何度も煩そうに髪を掻きあげていた。
見かねたイゾウが時折髪を結ってやったりしていたけれど、イゾウの気分次第なので結ばない日も多い。
今日も今日とて海風に髪をさらわれながら、何度も顔にかかる髪をどかしていた。
サッチはしゃがんでとの距離を縮め、伸びた髪をつまむ。


「邪魔だろ、これ」

「じゃま」


やはり、本人も邪魔と認識していたらしい。迷うことなく言いきった。
女は髪を大事に思うものだと聞いていたが、はまずそんなこと思わないだろう。
色気より食い気なのは知っている。見た目にも頓着しない。
寝起きのぼさぼさ頭でも気にしないし、それを見たマルコが髪ぐらいとかせと小言を言っているのを聞いたことがある。
この船で子供を女扱いする男は少ないけれど、子供に生活のあれこれを教えるのは大人の役目だろう。といっても、海賊だから見本になるようなものではないが。


「鬱陶しいんなら、いっそ切るか?誰か髪切るの上手い奴がいたはずだ」

「あ、きる!それめいあんな!!サッチいいこという!!」


新発想!と言わんばかりに目を輝かせたは、やっぱり頭の弱い子なのだろうなァとサッチは苦笑する。
髪を切ると決まれば、後はもう早い。
散髪が得意だったのは誰だったか、と頭の中で仲間の顔を思い浮かべていると、急に手が軽くなった。
の髪をつまんでいて、その手ごたえが急になくなった。
その事で考え中断し、目の前のを見た。


「おっま、なにやってんだよ!?」

「かみきってる」

「アホ!自分で切る奴があるか!!」


どこからか取り出した小刀で、は髪を切っていた。
ざっくざっく、長い所を適当につまんで、適当に短くざっくり。
止める間もなくそのままざくざく切り進め、気付けばもう散髪は終わっていた。


「すっきり!」


散らばった髪の後片付けは誰がやるんだとか、見るも無残な髪型だとか、行動力があるのはわかってたけど。まぁそんなことはどうでもよくって。
あたまかるくなったー、とさっぱりご機嫌、でもざんばら頭なを見ながら、これを見たマルコを想像する。
怒られるのは俺なのか?とサッチはとりあえず、少しでもをマシな姿にしようと先程思い出した散髪上手な隊員の元へを連れていこうとを小脇に抱えた。







 
後日談
短く切りそろえられたまだマシな姿のを見て、マルコは頭を抱えて坊主じゃないだけマシだ、と呟いたそうな。
2011/07/24