お子さま行進曲



その日は珍しく生の果物が手に入ったので、食堂でデザートとして振舞われていた。
小さくて丸くて赤い、さくらんぼ。
大の男の大きな手で小さなさくらんぼをほおばる姿はどこか不釣り合いだが、コトリがせっせせっせと食べてる姿はハムスターを連想させる。
その隣―――実際は膝にコトリを乗せているのでその下になる―――ではマルコも味見程度にさくらんぼを食べている。


「ん、そこそこあめぇな」

「んまー」

「種はちゃんと出せよい」


ぷぇっとそばに合った空の器に種を吐き出す。
一度に幾つもさくらんぼを食べるものだから、ごろごろと種も出てくる。
よく見ると噛み砕かれた種の欠片もあって、本当に考えなしで食べる子供だなァとマルコは改めて思った。
まぁ、海の上で食べる果物にしたら美味い方なんじゃないだろうか。
島に上陸した時に食べる果物とは比べ物にならないが、ドライフルーツよりかは美味しい。
なんでも物珍しがってうまいうまいと食べるコトリにしたら、がっつきたくなるのも当然か。


「サッチ、くきもおいしい?」

「ん〜?お前は食うなよ。食いもんじゃねェから」


横を見ると、サッチが何か口をもごもごさせていた。
どうやら茎の部分を口に含んでいるらしく、新しい食べ方か、とコトリが興味深そうに見ていたのでマルコからも食べるものじゃない、と釘をさす。
食べ物ではないとわかると、そっかぁ、とまたさくらんぼを食べ始める。
興味を失ったコトリとは別に、マルコは呆れ顔でサッチを見た。


「なにやってんだよい」

「あれだよ、あれ」

「あれこれで通じる仲だと思ってんのかよい」

「俺とお前の仲だろー!っあー、無理。ギブ」


べっと茎を吐きだしたサッチは一体何がやりたかったのか。
コトリがマネするから、あまり食べ物で変なことはしないで欲しい。というか、するな。大人なんだから。


「ほら、口ん中で茎を結べるとキスがうまいっつーあれだよ」

「アホ」

「じゃあマルコやってみろよなー!難しいんだぞ、これ!!!」


ぶーぶーむくれるイイ歳したおっさんを相手にするのは面倒だが、やらなかったらやらなかったでずっと五月蠅いので、マルコは仕方なくさくらんぼの茎を口に含んだ。


「ほれ」


しばらくして口の中に手を突っ込んで出てきた茎は、きっちりと片結びされていた。
それを見たサッチ撃沈。
負け惜しみに、おっさんがやったってキモいだけだ、なんてうっかり呟いたものだから、マルコからげんこつを貰った。
全て見ていたコトリも見よう見まねでやってみた所、うっかり出来てしまったのでますますサッチを落ち込ませた。






  
後日談
さくらんぼの種を飲みこんだら腹から芽が出る、と誰かに吹聴されたコトリがどおしよぉぉ!!と泣いて騒いでいた。
2011/07/27