
お子さま行進曲
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「政宗様ー、お団子持ってきたよ。やっぱ月見には団子とお酒でしょ!」 「テメェが食いてェだけだろうが」 「てへっ?」 自室の小窓から一人静かに晩酌をしていた政宗の元に、が団子を持って現れる。 は当たり前のように政宗の隣に座り、酌をした。 「お月さまみて楽しい?」 「わびだのさびだの言ってもお前にゃわかんねェだろうな」 「お団子食べてお酒飲む言い訳的な?」 「俺をそこらへんの宴会馬鹿と一緒にする気か」 ぐにーっとの頬を引っ張れば、ほへんひゃひゃいー、と謝罪の声が聞こえたので政宗は手を離した。 休む直前の自室に許可なく入ることを許す程度には、気安い態度を受け入れる程度には政宗との間に確かな関係はある。 政宗は奥州城主、は忍。 一介の忍が城主に気安く接するなどまず考えられない間柄だが、政宗はの全てを許す。も政宗の全てを受け入れる。そんな関係だった。 は幼いころから城の忍だった。 幼かった梵天丸の影として忍務を行う事もあった。 子供の顔なんて諸国の城主にはどれも同じに見えるし、気にする者もほとんどいない。 性別の違いはあったけれど、子供の影という事ではよく梵天丸の代わりとなっていた。 そのおかげで幼いころから梵天丸との間には面識があった。 梵天丸が流行病で右目を失った時、も影役として右目を抉られた。 幼かったは自分の身体の一部を失う事に泣いて嫌がったけれど、城主の圧力と周囲の大人たちに言いくるめられて右目を捨てた。 右目を失い孤独になった梵天丸は、同じく右目を失ったに気を許した。も右目を捨てたことにより、梵天丸のためだけに生きる事を余儀なくされた。 城主にも周囲からも、に一生梵天丸の影として共に生きろと言われた。 それからは梵天丸が元服し、男女の差が如実になるまで影を務めた。 影を退役しても忍としては政宗の下に仕え続けた。 本来の主である輝宗への謀叛が企てられた時も、は輝宗でなく政宗についた。 右目を捨てた時、は一生政宗と共にあれと決められていたし、自身もそう思っていた。 だからは、政宗と一生を共にする。 そして政宗も、と共にある事に異存はない。 政宗がいる限りは政宗につき続けるし、がいる限り政宗は一人ではない。 お互いがいるからこそ成り立つ関係で、二人は一緒にいる。 「静かな夜でいーねー」 「これがいつまで続くか、だな」 「続けさせるために、政宗様がいるんでしょ?」 That's right.と政宗が肯き、酒を煽る。 も団子をかじる。 月がどうのこうのはまったくわからないし何も感じないけど、政宗と二人きりというのは落ち付くなァとは思う。 ふと普段なら考えないような事を考えてしまったのは、月のせいだろうか。 「ねぇ。もし政宗様とが離れ離れだったらどうしてた?」 「Ah?もしものことなんかしらねェよ」 「そだよねー。今一緒だからそれでいいよね」 戦国乱世、同じ運命を背負った二人はこれからもずっと一緒に戦い続ける。 死が二人を分かつまで。 ← □ 後日談 「政宗様、近頃厨房の菓子が消えていると報告を受けているのですが」 「そうか」 「ご注意願えますかな?」 「I don’t know. 俺ァ何もしらねェな」 2011/07/31 |