お子さま行進曲 ロジェと!



「たぁいまー!」

「おー」


がらがらと玄関を開けて帰宅したにマルコは声だけで返事をして部屋で新聞を読んでいると、案の定どたばたと駆け足の足音が聞こえ、スパンと勢いよく襖が開かれた。


「ただいま!」

「おかえりよい」

「ほわいとでー、もらった!」


座イスに座っていたマルコにが駆け寄り、読んでいた新聞の隙間からずいっとかごに詰められ、リボンでラッピングされた洋菓子を見せてきた。
今日も今日とて小さい友人宅に遊びに行っていたなので、そこで貰ったのだろうと思う。
本日の日付は、3/14、2/14の一ヶ月後、しいていうならホワイトデーだ。
一ヶ月前、どこからかバレンタインの情報を仕入れてきたがサッチにねだってチョコチップクッキーを作り、白ひげみんなに配っていたのは記憶に新しい。
みんなしてありがとうと笑い、クッキーを食べた。
おそらく、各々ホワイトデーの贈り物を用意しているだろう。
マルコ自身も少し高級なチョコレートを買ってきて、の目につかない所に隠してある。

しかしまさか、あの友人にまで渡していたなんて。
ロジェはの友人だが、何かとで遊ぶ、マルコからみたら悪友以外の何者でもない。
けれどはロジェを気に入っていて、よく懐いている。
バレンタインをどうとらえているのかは知らないが、好きか嫌いかの二択で言えば間違いなくはロジェが大好きなので、バレンタインと称し渡していたのだろう。
手作りのクッキーに店でわざわざ買ってくるような立派なホワイトデーがかえってくるなんて、小さな友人もなんやかんやでの事が好きらしい。
よかったな、と頭を撫でてやると、は嬉しそうに笑う。


「ロジェがなー、くれた!」

「今日はホワイトデーだからな」

「ありがとうの日な!スモーカーのおっちゃんが、いつもすまんっていってた!!」


ロジェの保護者であるスモーカーとは警察と暴力団という関係上そこそこに犬猿なのだが、子供を通じては少しだけ仲がいい。
流石は保護者というか、ロジェの性格を知り尽くした上で、彼なりの詫びの意もこの菓子折りには込められているのだろう。
ロジェに踊らされているのはだが、ロジェに踊らされているに振り回されているのは主にマルコやこちら側だ。
もちろんもやんちゃというか、体力が有り余って常に暴走気味なので遊びに行くたびあちらに迷惑をかけているだろうからお互い様なのだろうが、それでもそこそこ上等な菓子折りなので、あちらさんもあの子には手を焼いているという事か。
貰ったお菓子の自慢と報告も終わったらしいはふんふんと上機嫌で包んであるリボンをぽいと投げ、可愛く見えるよう配置されているお菓子を気に入ったものからぐちゃぐちゃにしてしまっていた。本当に食い意地しかない。
座イスの背もたれから身を起こし、かごごとお菓子を取り上げる。


「あー!の!」

「もうじき夕飯だから、我慢しろい」

「やー、たべる!ばんごはんもたべる!!」


マルコは立ち上がりの手の届かない高さまでお菓子を持ち上げたが、は菓子を取り戻そうと足元からよじ登ってくる。
体力馬鹿であり、無駄に運動神経が優れているは狙った獲物は絶対に逃がさない。
食い意地が加われば、地の果てまでも追っていくような子供だ。
食べ物に対する執着心は子供ながら恐ろしい。
足からよじ登り始めたは背中を通過して肩の上にいる。
呆れるほどの執念にマルコはため息をつき、お菓子を持っているのとは反対の手でをつまみ上げた。
ちゅうぶらりんのがお菓子お菓子騒ぐが、ほうっておけばそこそこ量のある洋菓子を全部食べつくすのでここはお預けだ。


「まて」

「わんっ!」

「まて」

の、おかし!」

「夕飯だつってんだろーが」

「ばんごはんもたべる!」

「後で動けなくなるだろい」

「うー、うー、うー、の!がもらってきた!」


食糧があればあるだけ食べるので、サッチの作ったバケツプリンを完食し、その後の夕食も間食し、動けなくなった。似たような事を二度三度繰り返し、サッチを怒るようになったのはつい最近だ。
他にも限界を知らないは食べられるだけ食べる。そしてその後、確実に動けなくなり、腹の重さに呻き苦しむ。
いつから家に消化剤が常備されるようになったのか。
それでも当の本人は懲りないから困ったものだ。
食べ物の事となるといつも以上に意固地になるので、言いくるめるのも骨が折れる。


「飯食い終ってからにしろ。別に菓子は逃げたりしねぇだろ?」

「うー、いま」

「今日はサッチがウマいもん作るってはりきってたぜ」

「きょうごちそー!?」

「たぶんな」

「じゃあはらごしらえにいっこだけ…」

「お前は…!」


それでも、一つだけと自制心が効いているので一つだけと約束し、お菓子を返し、つかんでいたも畳の上に降ろしてやる。
すぐさまお菓子に飛びつき、足元で食べる一つを吟味している子供に呆れつつも、なんとか落ち付けることはできたのでよかったという事にしよう。


*


よもや全員が全員ホワイトデーのお返しに食べ物を贈るとは、予想だにしなかった。
いや、の好きなものといえば誰もが真っ先に食べ物を思い浮かべるだろうから、予測はするべきだった。
洋菓子、和菓子はもとより、肉や高級缶詰、地方お取り寄せのものまであるのはどういうことだ。
特にサッチなんか気合いを入れたいつもよりも豪勢で量のある食事と、二段重ねのケーキだ。
オヤジも名のある洋菓子屋の8号ケーキ2台で、ケーキだけでも3台ある。
いつも以上に目を輝かせて涎を垂らし、興奮のあまり逆に大人しくなっているのが不気味だ。

翌年から、お互い何を買うのか綿密な打ち合わせがされるようになった。
腐ったらどうする!?と泣きながら貰った食べ物を死守し、食べようとするをなだめ落ち付かせるのは、その場にいた白ひげ一家みんなでおこなった。






真樹さんにホワイトデーをおねだりされたので(*´∇`*)  そんな、おねだりなんてされたら書くしかないじゃない(〃ノωノ)
2011/03/16