お子さま行進曲



「あじゅいぃぃ」

「とけんな、見てるこっちがあちぃよい」


甲板でだらりとが溶けていた。
手すりにもたれかかって軟体動物のように溶けている姿は、正直気持ち悪い。体が柔らかいのか、骨がないのかと錯覚するほどでろりとしている。
海へ落ちる心配をしないではないが、落ちた所でどうせ自力で這い上がってくるのでそっちの心配はあまりしていない。
むしろ心配すべきは―――


「あーつーいー」

「だから、服脱ぐなって何度教えたら気がすむんだよい!!」

「だってあっついもん」


既に肌の露出が7/10を超えている。いつも露出の多い格好だと言われればそれまでだが、それにしたって目に余る。
日々甲板に出てあれやこれやと海風に当たり陽に焼かれているので、日焼け痕がくっきりと残っている。若いというだけで肌は碌に手入れもされていないからぼろぼろだけど、女の日焼けとはそれだけでなまめかしいから困ったものだ。
もちろん、に色目を使うなんて白ひげ海賊団古参組は思わないけど、新参者はわりかしそうではない。特に最近入ったばかりのルーキーなどは。
昔は小さかったし、すっぽんぽんになってたなァと笑う古参の発言に、!?と驚くルーキーがいたとかいないとか。
寒いのは平気なくせして暑さに弱いは、夏島付近になるといつも暑さに負けてだれている。
あまりのだらしなさにマルコが注意するも、きかないのが現状だ。


「全裸じゃないんだからいいじゃんかー」


ぶーたれるに、全裸よりも着衣の方がエロいこともある。と言ったところでわからないだろうし、それよりも「ならいっそ全裸の方がマシだね!」と全裸になられる方がよほど困る。
毎度のことながらどうしたものかと肩を落としていると、噂のルーキーがやってきた。エースが来てから夏島を通るのは初めての事なので、を見つけたエースはそのとろけ具合と肌色部分の多さにぴゃっと飛び上がっていた。


「おっま、なんだよそのカッコ!!」

「エースこっちくんな!エースが来るともっと暑くなる!!」

「ハァ?ンだよそれ」


反抗期はとうに過ぎたはずのエースだが、どうしたって仲のいい子供二人は反発しあうらしい。理由なく邪険にされたエースがの言葉を無視してずんずんと近づいていく。
炎の実の能力者であるエースは、自身が若いのも相まって人よりも多少体温が高い。それゆえ冬場はにカイロ替わりにされているが、暑い場合は立場が逆転するらしい。
暑いのが苦手ながエースを遠ざけ、それを面白がるエースがに近づく。
最初こそきゃっきゃと楽しそうにじゃれていた二人だが、次第に闘争心に火が付いたのか本気の鬼ごっこへと変わっていた。


「くんなー!エースこっちくんな!!暑っ苦しい!!」

「へっ、そんなに暑いんなら、海へ落してやるよ!」

「海に入るのはいいアイディアだけど、エースに落とされるのは腹立つ!」


ぎゃいぎゃいと騒がしくなり、ケンカが始まる。
最初こそケンカだケンカだと二人をはやし立てる様にしていた他の船員も、こうしょっちゅうケンカしていては騒ぐ気も起きなくなる。毎日船内のどこかしらで血の気の多い連中がケンカしているので、子供二人がケンカしていようと日常風景の一つとして気にも留まらない。
ただ、今日は少し様子が違った。


「うー、マルコ助けてっ!」


暑さで力が出ないのか、いつもなら決してケンカの仲裁を求めないがマルコに助けを求めた。
それほど暑さがつらいのか、エースが嫌なのかはわからないがどうしようもなかったのだろう。
ハァ、とため息をつき、傍観していたマルコが仲裁に入ろうと腰を上げる。その間にもじゃれあいというか、ケンカはエスカレートして、ついには取っ組み合いになっていた。

ほぼ裸というか、裸体に若干布が掛かっているだけのと、上半身裸のエース。
とエースが組み合っているのはよく見る光景だが、それが半裸同士となっては見え方も違ってくる。
暑さで本調子でないのか、両腕を掴まれ組み敷かれる。そしてが身動き取れないよう上にのしかかっているエース。
はたから見れば性的な意味でが襲われそうになっているように見える現場に、さすがの保護者も嫉妬心が湧き上がり、躾ではない男としての拳でエースを殴った。


「いい加減にしろ!」


ただし、やっぱり子供組保護者でもあるので、保護者としての頭も叩く。


「エース!あんまし焚き付けんな、邪魔だ!」

!いい加減ちゃんと服着ろって何度言ったらわかンだよい!!」


本気でマルコが怒っていると悟った二人は、しゅんと項垂れる。怒られるのは毎度のことだが、学習しないエースが「でも」「だって」なんて女々しい事を言うものだから再びげん骨を脳天に貰う。
ガミガミと怒られつつも、翌日にはまた似たようなことをしているので、どうしたもんかとマルコは頭を抱えた。







子供のころから見慣れてるので、アホの子の半裸にエロさよりもだらしなさを感じる保護者。
2018/11/22