「愛しておりますっ!!」
それは唐突な、けれど、激烈な告白だった。
乙女は頬を薔薇色に染め、瞳を潤ませ、これが精一杯だといわんばかりの艶やかな声で愛を謳う。 語られた愛は誰が見ても本気の愛で、例え乙女が愛を伝えた相手が玲瓏たる微笑みを浮かべたしなやかでグラマラスな体躯を持つ絶世の美女だとしても乙女の愛は本物だった。
乙女の真摯克必死な目で見つめられた美女は、ただただ口角を上げるばかり。
「一目見たときから、貴方様しか居ないのだと、貴方様にあたくしの総てを捧げようと、ずっとずっと、思い慕っておりました」
「それは、どんな覚悟あってのことだ?」
「覚悟などではありません。これは、ただの恋慕の情でございます。貴方様を唯々愛しいと思う心だけでは足りませんでしょうか」
美女の口元の弦が更に撓る。
美女は吟味するかのように乙女の美しい顔を、たおやかな矮躯を見た。
そしてぺろり、と自然に紅い扇情的な舌で尖った八重歯舐める。
「貴様、総てをこの私に捧げると言ったな。その言葉に偽りはないか」
「貴方様に伝える言葉は、総て真実でございます。どうしてあたくしが愛しい貴方様に嘘偽りを語れるでしょう」
「ならばその忠誠、試させてもらうぞ」
「今、この場所で服を脱げ、と言ったら、お前は脱げるか?」
美女が言った瞬間、乙女はなんの躊躇いもなくその柔肌を外界に晒した。
これで構いませんか?と小首を傾げる乙女は、最早周りの視線など感じていなかった。
街路での突然の脱衣に周りを歩くものたちは一行に歩みを止め乙女を見やったが、乙女は気にした様子がない。
寧ろ美女が自分に命じ、その使命をまっとう出来た満足感のほうが勝っている様子だった。 乙女の顔には満面の笑みが浮かべられ、次は何をすれば良いのか、と命令を希う姿勢ですらある。
「ふん、中々のものだな。なら、これならどうだ?」
するりと美女の細く長い指が、手袋越しだが乙女の肩を滑る。
その感覚に乙女は小さく感嘆の声を上げ、いつの間にか間近に迫った美女の顔を見て目を見開いた。 切れ長の吸い込まれそうな深い色の瞳に目を奪われ、その美しさに恍惚としていれば鋭い痛みが右半身に走った。
「あっ」
嬌声とも悲鳴とも取れる短い叫びの後、痛みの熱の中何かが抜けていくような気分がした。
けれどそれはなんとも言い難い快感と、焼け付くような痛みを伴った。
乙女は快感と苦痛の狭間で身悶えしたが、美女から与えられていることを思えば総てが愛しく思えた。
少し後、美女が乙女の肩口から顔を上げた。
唇の端に紅い何かが付着していたが、美女の艶然たるを引き立てるばかり。
うっとりとした表情で乙女が美女を見ると、美女は妖艶に微笑んでいた。
「これでも、まだ私に総てを捧げられるか?」
美女の問いに、乙女の答えは決まっていた。
「頭の先から爪先まで、髪の毛一筋から血の一滴まで、身体と精神、あたくしの持てる総ては愛しい貴方様のものですわ」
「いいだろう。お前、名は?」
「、と申します」
「私の名は魔鹿女キュラ。、お前に名を呼ぶ権利を与えよう」
美女と乙女
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