その日、一人の禁魔法律家が忽然と姿を消した。
そのことはMSL魔法協会を騒がせ、様々な憶測が飛び交った。
「あたくしは、キュラ様に総てを捧げます。その存在さえも。愛しい愛しいキュラ様のものに」
うふ、とは笑い、自分の魔法律書に火をつけた。
勢いよく燃え上がる書は、灰になって空へ舞い上がる。
契約なんてものはいらない。
必要なのは、愛だけ。
「いいのかしら。書があれば、私と契約が出来るのよ?」
「かまいませんの。あたくし、キュラ様と契約で結ばれるなんて、そんなつまらない関係真っ平ですわ。あたくしは、キュラ様を愛しているのですもの。愛情に契約も何もありませんわ」
「愛い子。来なさい」
呼ばれて、はキュラの足元に傅いた。
つい、とキュラはの首を撫で、美しい曲線を描くその首筋に齧りつく。
与えられた痛みには恍惚とした表情を浮かべ、痛みの中に潜む快楽を享受した。
キュラから与えられるものは、にとって総てが愛しい形をしたもの。
痛みすらも愛しく感じ、は嬉しさで頬を染める。
キュラが離れていくのに若干の寂しさを感じながらも、再びその顔が見れることが、その瞳に映されることがまた嬉しい。
「やはり、は甘いわね」
「キュラ様への愛が妾を甘くしているのでしょうか。うふ、そうだったら、嬉しいのですけれど」
「なら、はこれからもっと甘くなるのかしら?それとも、渋くなってしまうのかしら?」
「あたくし、今でも全身全霊でキュラ様を愛しておりますの。愛しくて愛しくて、狂ってしまいそうなほどに」
の愛は、最上級のものであることに偽りはない。
けれど。
「うふ、いっそのこと狂ってしまえば、蕩けてしまうほど甘くなるのでしょうか。キュラ様、あたくしは間違ってもキュラ様への愛を失ったりいたしません。キュラ様が望むのなら・・・、いいえ、キュラ様が望まれなくても、あたくしはいついつまでもキュラ様を、キュラ様だけを愛し続けますわ」
上等だ、といわんばかりに、キュラはを抱きしめた。
その甘すぎる抱擁に、は一瞬夢かと思う。
けれど、この感触は、目の前にあるキュラの顔は、温もりは。
「キュラ、さま」
嬉しくて愛しくて、感極まっては瞳が潤む。
嬉しい嬉しい嬉しい。
嬉しくて、溜まらない。
愛しさが募る、愛しくて、これ以上ないってほど愛しているのに。
「それでもまだ、愛しております。キュラ様」
の瞳から零れ落ちた雫は、キュラに舐めとられる。
次から次へと零れ落ちるけれど、総て、キュラが舐めとる。
「いとしくて、たまらないの、です」
吸血鬼と薔薇
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