にゃーん

「にゃーん、ちっちっち」



「キャプテン、キャプテンともあろうお方がそんなにゃーとか言わんで下さい」



ペンギンがため息をつきながら、猫の前にしゃがんでちっちやっているキャプテンをたしなめる。
長身痩躯の矮躯を折りたたんで、長い刀を肩に担ぎ、切れ長の鋭い瞳で情熱的なまでに見つめるのは、猫。にゃーん。
顎鬚を蓄えた口で口ずさむのは、にゃーんと猫語。
刺青の施された手で誘うのは、猫。しかし威嚇されている。

先程刀を構え、能力を使い人を切り裂き、生首をもてあそんだ人間と同じとは到底思えない。
肩がぶつかって謝られなかった、逆に因縁をつけられたというほんの些細な理由で、刀を抜いた。
命を奪うまではいかなかったものの、悪魔の実の能力を用い腕を切り足を絶ち首を落とす。
死の外科医と言う通り名の通り、オペのように他者の身体を切り刻む行為は、傍目にはとても惨たらしい。
けれど命を落とすということはなく、本当に、遊ぶだけだ。
ある種命を奪うよりも酷いといえる。

そんな死の外科医、億越えルーキー、ハートの海賊団キャプテン、トラファルガー・ローという男は見た目に反して可愛いものにとてつもなく弱い。
ハートの海賊団唯一にして最強のマスコットだって、キャプテンであるローが猛烈に熱烈に強烈に勧誘して仲間にした。
可愛い、もふもふ、可愛い、これがローを動かす全てである。

にゃーん。
猫の高くて丸っこい鳴き声が裏路地に響く。



「キャプテン、ほら、帰りますよ」

「ペンギン、俺はこいつを飼う!」



頬を高揚させ、年甲斐もなく少年のようなきらきらした瞳で、手に持った猫をずいっと眼前に差し出された。
猫は抱きあげられるのが嫌らしくにゃーにゃー鳴き、必死に身をよじっている。



「のら猫なんて、病気持ってるかもしれんでしょう」

「何のための船医だ」

「人のための船医です」

「俺はキャプテンだ!」

「ベポがいじけるでしょう!浮気ですか!!」



ふしゃーっと猫のように威嚇しまくしたてるローと、ばばーんと実は背後にずっといたハートの海賊団のアイドルにしてマスコット、喋って歩く白クマベポを指した。
何かとすぐネガティブになる白クマは、案の定ローが自分以外の動物に熱をあげている姿を見てしょげていた。
猫じゃなくてごめんなさい、耳が丸くてすみません、尻尾も長くなくて申し訳ないです、今度からにゃーって鳴きます。
ずーんと黒雲を背負うベポに、猫を持っていたローはうっとつまる。



「キャプテン、俺じゃ、不満?」



しょーんと見た目にもわかるほどしょげているマスコットキャラに、白クマに、白いもふもふに、つぶらな瞳のかわいい熊に、ローの思考回路はショート寸前と言うよりもショートした。



「馬鹿野郎、俺がお前以外の生物にうつつを抜かすわけないだろう」

「キャプテン…!」



ローとベポはかたく手を握り合い、ぶっちゃけ関わり合いになりたくないお熱いムードにペンギンはいつものことながら呆れて息を吐き出すことしかできなかった。
先程まで渦中の真ん中、嫌がるのを無理やり抱かれ熱い視線を一身に受けていた猫はぺいっと放り投げられ、くるりと一回転すると石畳の上に華麗に着地。
とんだ災難に行き当たったと、早々に路地裏に消えていった。

動物を見つける度、こうなるのは勘弁してほしいなぁと心底思うペンギンだった。





キャプテンと動物






(でも、ベポがいるおかげで船が動物王国にならずに済むからいいか)
(キャプテン!)
(ベポ!!)

(うっとおしいけど)

(なんだ、やきもちか、ペンギン!!)
(ないっすわ…)
(俺はお前も愛してるぞ)
(あざーっす)



2011/02/27
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