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「乗せろっ!!」
堪忍袋の緒が切れた。
じれったい、もどかしい、腹立たしい。
己は何の為に潜水艇に乗り込んだのだ、回天に特攻に志願したと思っている。
祖国を守り、ひいては家族や愛しい人を守るためだ。
それなのに、勿体無い、だと?
己の命など、惜しくはない!
戦艦に待機している意味を考えろ、張り詰め、緊張し、厳粛に待ち受けているのだ。
回天に乗り込み、発射され、敵艦へと向かい、出来るだけ多くの敵を屠り、沈めてやる。
例え敵諸共海の藻屑と化そうとも、己の命一つで祖国を守れるなら安いものだ。
それだけの覚悟を備えて、この艦に乗っているというのに。
己の覚悟を矜持を誇りを尊厳を熱意を信念を守りたいという思いを、踏み躙られた、蹂躙された、貶められた。
一つは酸素を抜かれ、一つは敵艦と接触し落とされた。
残る二つも、陽動作戦のため遂に発射された。
回天のすべてが、放たれてしまった。
敵艦を沈めることなく、誰の命も奪うことなく。
目的を達成できず、野望も潰えた。
この艦に乗っている己たちの存在意義を奪われた。
ただ無駄に酸素を吸い場所を取り何も出来ない足手纏いになり下がった。
己の命のおかげで、配給を優先的にもらい家族を養っているのに。
その恩を返すことなく、ただ艦に乗っているだけなんて。
大切な日本の国庫を無断で掠め取ったに等しい。
国民が貧困に喘いでいるというのに、只飯ぐらいとは不遜にも程がある。国民にどう申し開きをせよというのだ。
己の命で贖った糧、支払わずにおれようか。
吾等を何方と心得る。
吾等は誇り高き日本男児ぞ。
2009/06/20
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