狡噛さんから取り上げた旧式の拳銃の照準が震える。
槙島聖護が哂いながらわたしを見る。
手には剃刀。
剃刀は狡噛さんの脇腹に突き刺さっている。
狡噛さんの脇腹からは血が流れている。
狡噛さんは苦痛に顔をゆがめながらもわたしを見て何かを叫んでいる。



「やめろ、常守!槙島聖護は捕獲対象だ!!」

『犯罪係数74、執行対象外です』



槙島聖護、狡噛慎也、常守朱を取り囲む公安局全員が常守にドミネーターを向けるが、犯罪係数が低いためパラライザーを撃てない。
犯罪係数が低いということは、常守は槙島に拳銃を向けてはいるが撃つ気はないのだ、警告をしているだけなのだ、と三人を取り囲む人間は安心している。
だが、いつ犯罪係数が上昇して槙島を撃つかわからない。
ましてや常守は一度今と同じ状況で親友を喪っているのだ。ドミネーターを持つ手に力が入る。
周囲はドローンが包囲しているため槙島を逃がすことはない。
犯罪係数が低くとも、捕獲対象として槙島の情報をインプットしてある。
生きて捕獲せよ、と命令が下っている槙島を、殺させるわけにはいかない。

公安局は、槙島聖護ではなく常守朱にドミネーターを向けて取り囲んでいた。



"朱ッ!助けて!!!"

"君には失望しました"

"いやぁ、死にたくない"

"罰を与えます"



恐怖で目の前が真っ暗になる。
頭が痛い、心臓が痛い、うまく呼吸ができない。
あの時と同じことが、今また繰り返されようとしている。
槙島聖護と、槙島に捕えられ傷つけられている大切な人。
自身の手にはドミネーターではなく、旧式の拳銃。
シビュラシステムが犯罪者として裁くのではなく、自らの意思で相手を殺す道具。

人を殺すのは犯罪者。

じゃあ、狡噛さんは?
執行官のみんなは?
槙島聖護はどうなるの?

わからないわからない。
シビュラシステムは狡噛さんを犯罪者として、槙島を一般人とみている。
槙島聖護は、犯罪を犯す危険性が極めて低い、無害な一般人だと。



「そんなの、嘘だ」



視界が戻る。
目の前には槙島聖護。
人質に狡噛さん。
周囲に公安局。
それを更に囲うようにドローン。



「常守朱、君はどうする?また見殺しにするのかい?」

「よせっ、常守!!」



「わたしは…」



「常守監視官!銃をおろせ!!」

『犯罪係数54、執行対象外です』



シビュラシステムは、槙島聖護を裁けない。
じゃあ、誰が狡噛さんを助けるの?



【朱ッ!!】

「わたししか、いないじゃないですかっ!!!」



銃声が、響いた。
誰かの悲鳴が聞こえた。
ドミネーターが音声が静かに響く。

『犯罪係数97、執行対象外です』





最終回妄想サイコパスでした。
2013/03/11
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