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だん、と鈍い音が響いて、次いで悲鳴が上がった。
「うぬでも腕がもげれば泣き叫ぶか」
は切り落とされた腕の傷口を抱くようにうずくまり、声にならない声で呻いている。
信長は切り落とされた腕を片手に持ち、もう片方はの腕を斬り落とした刀が握っての前に立っていた。
信長が見下ろすはただ小さい少女だ。腕を切られて泣き叫ぶ、普通の人間とかわらない。
傷口からあふれ出る血が血だまりを作る。
戦場で見慣れた、唯の血だ。普通の、赤い、それだけだ。
「解せぬな。ただの娘ではないか」
積み上げた屍を背景に、信長は何の躊躇いもなくの腕に歯を立てた。
筋肉を噛み切り、皮を食いちぎる。
子供の肉は柔らかいというが、生肉という事もあって若干食いちぎるのは難儀だった。
咀嚼する度に鮮血が溢れだし、口の端から伝い落ちる。
子供の腕は細く、信長が大きく口を開ければばきりと腕を丸ごと噛み砕く事が出来た。
皮、筋肉、尺骨、橈骨までも丸ごと食いちぎる。
血管や神経など噛み切る事の出来なかったものが引っ張られてぶちぶちとちぎれる。
細い骨もぼぎぼぎと音を立てて噛み砕き飲み込む。
味は普通の生肉だ。
第六天魔王といえども人間を食すのはこれが初めてなので比べようがないが、いつぞや食べた牡丹肉と変わりのないような気がした。
もちろん、日頃食べているものの違いか牡丹肉のように土臭くはない。
ただ生臭い、鉄臭い、血抜きなんてしているはずもなく、血が口内でねばついて不快だ。
特に変わった味はしない。
人間といえど、肉の塊という事を織田信長は再認識した。
子供の腕でも、それなりの質量はある。骨があれば神経も血管もあり、爪もある。
けれどそれらを吐きだすこともせず、無理やり飲み込む。
口の端から滴る血はそのままに、食べる腕からは可能な限りすべてを食らい尽くす。
そうしての腕は信長に食べられた。
「お腹を壊してもしりませんことよ?」
「これで不老不死の力を得るのなら安い代償よ」
「あら、そんな事を考えてたの?おかしな人だわ」
信長がの腕を食べきるころ、先程まで痛みに悶えていたが、もうけろりとしてたちあがっていた。
腕は相変わらず失われたままだが、傷口はふさがっている。
信長はの生死が気になるわけでもないし、腕を失ったからどうだとも思わない。
隻腕のままでもかまわないし、また生えてきたら生えてきたでどうでもいい。
信長が望むことはただ一つ。
「天下を我が手に」
それだけが信長の野望だった。
2011/12/11
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