「今回はこいつも出る」



中将であるサカズキがその背から現せたのは、どう見たって小さな子供だった。
まだ少女としか呼べないほどの子供は、女で、子供だった。
周囲のざわめきも大きくなる中、サカズキが一喝する。



「わしの意見に文句あるやつぁ出てこんかい」



一気に静かになった兵たちを見て、これだから意気地のないものはと嘆息する。
横にいるをガープから引き取って、2年が経った。
今回が公式上の初陣だが、経験だけは一般兵以上だ。
サカズキ自ら鍛え上げたし、実践も積ませた。
その功績は表立ってはいないものの、既に海賊たちの間では鬼子として広まりつつある。
おそらく、ここに集まって集団に埋もれているばかりの者どもよりはよっぽど強いだろう。
いや、強い。
なんたって、自分手ずから育て上げたのだから。



「戦闘用意!」

「アイ・サー!」



どん、と開戦の合図のように大砲が撃たれた。
すぐさま戦闘準備に入り、攻撃開始の号がかかる。
掛け声とともに駆けだす兵たちを見ながら、サカズキは横で前だけを見ているに声をかけた。





「はい」

「行け」






 
音もなく、子供は消えた。
2010/11/20