暫く駆けまわり敵の数を減らした後、は立ち止まる。
先ほどまで相手の首を切るために使用していたナイフを足のホルスターに仕舞い、背負っていた刀を抜いた。
サカズキからの命令は把握している。
いつもどおりが数を減らした後、残ったものを後続隊が掃討する。
これがに与えられている指令だった。



「が、ガキが粋がった真似しやがって…!!」



子供だからといって、見下して突っ込んでくる輩を一刀両断する。
サカズキが用意してくれた薄く折れそうな刀は、恐ろしいほど切れ味が良かった。
の技術とスピードがあれば、力がなくとも楽に相手を斬ることができる。
後ろから襲ってくる輩を振り返ることなく斬り捨て、手配書で確認した賞金首―――この場合はこの船の船長―――を見据えた。



「死をのぞむか、インペルダウンにしゅうようされるか、えらばせてやる」

「ハッ、子供ごときに俺を殺せると思うのか!」



船長は嘲笑したが、周りに居た部下は嗤わなかった。
既にどれほどの仲間が殺されたか。
おそらく、もう数えるほどしか残っていないだろう。
船長は今しがた船長室から出てきたばかりだから知らないだろうが、自分たちはずっとこの子供の相手をしていた。
これは子供じゃない。
こんなに人を殺すことに長けた子供がいてたまるか。
これは、この子供の姿を模したものは。



「相わかった」






  
鬼だ。
2010/12/05