うさぎ、うさぎ、何見て跳ねる



「なァよ、お前さんは一体何を食って生きてんだ?」

「霞を食って生きておる」

「お前がそんなだと、示しがつかねェって困る連中がいるんだがなァ」

「ふむ、それでうぬは我にどうせよというのだ?」



船首で海風を受けながら座禅を組むの後ろからシャンクスが問う。
と船員たちの我慢比べが始まって、既に一月。
宣言通りはその間何も口にしていない。
毎日誰かしらを見張っているが、少なくともが何か食べているところを見た船員はいないし、備蓄の食糧にも手をつけられていない。
は日永一日座禅を組んで瞑想しているか、寝ているか。
それ以外、は船のどこかにいるだけだった。



「根競べといったのはうぬ等ではないか。音を上げたのはそちらと思ってよいのかね?」

「あー、そーいうワケじゃねェんだけどな。いい加減なんとかなんねェ?正直俺もお前がここまでするとは思ってなかったわ。すまん」

「なんだ、約束を反故にするというのか。やれやれ、我の苦労は水泡に帰すのだな」



シャンクスに頭を下げさせるというのは中々の出来事なのだが、はそれを知らないし、頭を下げられたからと言って現状が変わるわけではないので謝罪に興味はない。
はこれ見よがしに大きく肩を落とし、ため息をついた。
賭けのように始まったとレッドフォース号船員の根競べは相手の戦意喪失での勝利と取ってよいのだろうが、こちらの負けだが従え、ときた。
あまりにも傲慢なその申し出にはどうしたものか、と思案したが、結局一つしか思いつかなかったのでため息しか出ない。
やれやれといったように緩く首を振りながら緩慢に立ち上がり、シャンクスの眼前に立つ。
シャンクスはが何かするわけではないと思いつつも、若干身構えた。



「うぬよ。契約をしようではないか」



2017/08/08
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