は本人の言う通り、本当の道具だった。
殺せと言われれば速やかに殺す、ただ、それだけだった。
武勇を誇るわけでもなし、褒美をせびるわけもなし。
シャンクスが口を開き、命令を下す。是という言葉だけ残して、は消える。
時と場合により時間は様々だが、必ず命令を実行してからシャンクスの元に帰ってくる。それ以外の事は何もしない。
逆に言えば、それだけは確実にこなす。
「は本当に人間じゃねぇみたいだな」
「我は道具故、人になったつもりはない」
「つっまんねェの」
「我思う故に我あり、我は我にして我也。我は忍よ」
はレッドフォース号内で正当な位置を手にしていた。シャンクスの懐刀として。
間違っても腕ではない、シャンクスの欠けた腕を補うのはベン・ベックマンだ。
はあくまで武器でしかない。
シャンクスもを武器として扱う事に長けてきた。
人情派として有名だったが、全てにおいて人の心でものを考えるわけではない。
道具として扱ってくれと言われれば、それ相応の扱いだってとる。
現には道具としてある事が己が生き様としているし、それを否定するのはの言うとおり侮辱でしかない。
「なんでお前は、俺なんかを選んじまったんだろうな」
「我思う故に我あり。右も左も判らぬ状況下、生きるためにぬし様を選んだまでよ」
シャンクスはを見た。
気配も死臭も生気さえも感じさせない男は、一体何の為に生きているのか。
きっと、我思う故に我あり、と答えるのだろう。
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