海軍編 プロトタイプ



正義を背負うなら、この背は誰にも傷付けさせない。
正義が、正義こそが生きる標なのだから。
誰が傷つけてたまるか、己のプライドを、生きた証を。


「お疲れさまでした、中尉」

「着替え」

「用意してあります」

「コート」

「こちらに」


血に濡れた軍服を部下の前だろうと躊躇いなく脱ぎ棄て、素肌にコートを纏った。
なぜ軍服は、コートは白いんだと文句を言ったことがあった。
白こそ他に流されず、唯一の色であると言っていたのはセンゴクかガープか。
たぶん、センゴクだったと思う。ガープはこんな肩っ苦しいこと言わない。

背中に書かれた正義の二文字を血で消してしまわないために、は戦地へ赴く際はコートを着用しない。
海賊なんかの血で、悪い穢れたものでこの尊い字を汚したくはなかった。
もちろん、ここぞという大勝負の時は気合を入れるために着ていく。
慢心だと言われたことがあるが、それでも汚したくないものは汚したくないんだ。


「疲れた、お風呂に入りたい…」

「用意いたしますか?」

「ううん、帰ってから入る。ありがと、お疲れ様」


びっと敬礼してから、サカズキから借り受けたというよりも共同戦線を張っていた部下が部屋から出て行った。
は人に命令を下すのが苦手だ。
誰かと共に闘うのも苦手。
背中に負うは正義ではなく骸の山だと、進む道は覇道ではなく外道だと、誰かが言っていた。
正義の名のもとに悪を下す、何を言われようとは正義を貫くだけだ。
それがの生きる意味なのだから。



2010/11/02
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