海軍編 プロトタイプ



「火拳のエースが捕まった?それはそれは素晴らしい話だ。で、誰が捕まえた?」


黒ひげティーチと聞くと、は笑った。
仲間に、売られたか。
所詮賤しき海賊風情、性根が腐っている。


「ふん、仲間の首を手土産に七武を望むか。野心が強いのは認めよう、腕が立つのも承知した」


電伝虫から報告を終了する言葉が聞こえて、執務室が静かになった。
とんとん、と指で書類を叩く。
マーシャル・D・ティーチのプロフィールと、ポートガス・D・エースに関する極秘資料がそこにあった。
全て目を通し終わっているそれを灰皿の上に置き、マッチで火をつける。
はタバコや葉巻を吸わないが、極秘書類の始末ために灰皿とマッチは常備してあった。
一瞬で灰になるそれらを見つめながら、資料の内容を思い出す。
よくもやってくれたな、という怒りとも喜びともつかない笑顔が自然と浮かんだ。


「海賊王の血を引く絶対悪、許されるのならこのわたしが処刑しよう」


まさか、今の今まであの伝説の大悪党の血が引き継がれていたなんて、考えただけでも虫唾が走る。
血を絶やすために行われた粛清を、は知っている。
なんの罪もない命が次々と失われた。
これから生きるはずだった子供が、未来が、希望が消えていった悲しい1年。
一般市民の恨みと辛み、怨嗟と呪詛、悲しみと憎しみが海軍に向けられた。
それでも、そこまでしてもあの海賊王―――王と称することが憤慨ものだが―――の血は絶やさねばならなかった。

海賊王、ゴール・D・ロジャー。

この大海賊海時代の根底となり、海賊の伝説となった許されざる存在。
奴さえいなければ、ここまで海賊が蔓延ることもなかった。
悪がのさばる結果となった、世紀の大悪党。
その血が、今も脈々と受け継がれている。
正義の名のもとに、海賊王の血は、諸悪の根源は、絶やさねばならない。


「ポートガス・D・エース。世界を揺るがせ悪を増長させるその存在、正義である我ら海軍が完膚なきまでに殺してやる」



2010/11/05
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