風はなかった。
だから砂塵が舞う事も塵がかさかさと流れることもない。
相変わらず殺風景で飾り気一つない風景は、来た時と相違なかった。
結局折れたクロロがにされるがまま表に引っ張り出され、彼の言う “闘い” をしようということになった。
ルールはが決めたとおり、“クロロの発の使用禁止” それだけではハンデが軽すぎる、とクロロは更に “クロロの攻撃の一切を禁じる” と言ったのだが、それはが頷かなかった。
「ダメ。それじゃあ、戦いにならない。本気で来てよ」
「そんなことしてみろ、お前、瞬殺だ」
「わかってるよ。だから、程よく調整しながらね」
「手を抜くなと言ったのはどこのどいつだ」
「あからさまに勝利を譲られたってつまらないってこと。やだな、本ばっかり読んでるのに理解力ないの?」
はんっ、と鼻を鳴らすに、可愛げの欠片もない。
いつもと違う雰囲気に珍しい、と思いつつも、どうせいつもの気まぐれだろう、とクロロは自己完結し、コートのポケットに手を突っ込んだ。
そう、。彼はいつも唐突に始まり、唐突に終わる。天災の様なものなのだ、気にしても仕方のない。
ならば相手にしてやろうではないか。少し遊んでやれば満足して、おとなしくなる。
力の差は歴然、うまい具合に体力を消耗させれば、三日はおとなしくなるかもしれない。
丁度いい、ここいらで格の違いってものを見せつけてやろう。
クロロは口角をあげ、目の前のを見据えた。
「かかって来い。ご要望通り痛めつけてやろう、マゾヒスト」
「ありがとう」
思えば、彼が素直に礼を言ったのは初めてかもしれない。
2009/02/20
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