最初に動いたのは、言うまでもなくだった。
ここに来た一年半、みっちりと基礎からやり直し鍛え上げた筋力と体力と技量。
思い切り地面を蹴り、クロロとの距離を詰め、硬く握った拳を顔面に叩きつける。が、クロロは難なくそれを避けた。
しかし避けられることはも端からわかっていたらしく、互いに距離を取って終わった。
以上、が繰り出した最初の一撃である。



「だから、見え見えの顔面狙いはいい加減やめたらどうなんだ」

「やー、だってさ、相手の鼻へし折ってやるのって気分良くない?」



話しながら、は第二撃に移った。
今度はゼロ距離まで近づき、その姿を消す。
クロロは動きを目で追いながら、が姿を消した先が自分の足元だとわかるとすぐさま後ろへ飛ぶ。
は逃してなるものか、と足払いし、そのままクロロの顎めがけてアッパーをした。
けれどもクロロは足払いを素直に受け、倒れゆく姿勢の中でのアッパーを首をのけぞらせるだけで回避し、未だ足元に居るの顔面を蹴とばしてやった。
そして吹っ飛ぶをしり目に、コートをはためかせて優雅に着地をする。



「痛った。自分が言ったくせに、顔面狙い?えげつなー」

「俺はお前と違って確実にヒットさせられるからな」

「てゆか、わ、鼻血出てきた。ひゃー」

「攻防力の目算ミスだな。未だ下手だな、それ」

「てきとーでいーんだって、こんなの。大ダメージ食らわなきゃいいんだから」

「塵も積もればなんとやら。小さなダメージが蓄積されてこのあとの戦闘に影響が出なきゃいいがな?」

「あー、もー、ムカつくなー。ぜぇーったい、いつかクロロより強くなってやるんだから」



は両刃のナイフを取り出し、逆手に持つ。
刃渡りが20センチほどの両刃のナイフ。
が持つと小さく見えるし、やたらめったら凶暴に化ける。



「ま、念ありだから武器なんて飾りみたいなもんだけどねー」

「……卑怯じゃないか?」

「えー、ボク武器なしなんて言ってないしぃ?」



何度か垂れてくる鼻血を服の袖で拭っていたら、いつの間にか血は止まった。
鼻骨は折れてないし、何の異常もない。
当然だ、クロロは骨が折れない程度に加減して蹴ったのだから。
そのことがわかっているは、圧倒的な力の差に苛立つ。
一年半だ、一年半。
長くはないけど、短くもない期間。それだけの間修業を積んできたのに、まだこれだけの差がある。
絶望的なまでの差は、果たして埋まる日が来るのだろうか。
いや、とは首を振る。
来るのだろうか、なんて希望を込めた憶測ではいけない。
埋めてやるのだ、自分は最強を目指しているのだから。
そして、己の率いるインペラトーレを頂点に連れていくため。
その為に、世界を超えてここに来た。



「行くよ」

「どこからでも」







第二ラウンド開始
2009/02/24