お子さま行進曲



は誰にでも人懐っこい。
ただ、数名を除いては。


「おいクソガキ」

「べーっ」


はマルコが好きではない。
第一印象が悪すぎた。
マルコはを不審者と決めつけ、押さえつけ、泣かせた。
自分をいじめたマルコを、はもはや敵として認識している。

持ち前の俊足を武器に、はマルコに会うと必ずあっかんべーをして逃げていた。
子供のやることにいちいち腹を立てていては大人げないと思っていたのだが、いい加減堪忍袋の緒が切れた。
今日という今日は許せない、忌々しいクソガキに天誅を。
マルコとの鬼ごっこの始まり始まり。


「くぉら、待て、クソガキっ!!」

「ばーかばーか!!」


はけらけら笑いながらぐんとスピードをあげると、そのままマストに飛びついて梯子も何も使わず器用にのぼって行った。
呆気にとられたのは、二人の鬼ごっこを見ていた他の船員である。
つい先日白ひげ海賊団に入団したばかりとはいえ、所詮は子供。
雑用か見習いか、その程度のことしかできないと思っていたのに、曲芸か何かすいすいとマストをよじ登って…いや、駆け上がっている。
後ろを振り向いてみれば、追いかけているのは一番隊隊長のマルコであるし。
隊長を手玉に取るとは、末恐ろしい子供だというのがその場にいた船員の見解である。


「降りてこい、クソガキ!」

「うしし、いーよ!」


のぼったと思えば、今度は勢いよく飛び降りた。
マストのほぼ天辺付近までのぼっていたのでかなりの高さがある。
落ちてくるを見た船員は一瞬小さな悲鳴をあげたが、はくるくる回って、見事に着地した。
マルコの顔の上に。
もちろんだって馬鹿ではないし、一応は前線で忍として活躍していた身である。
手心を加え、ちょっと鼻の骨が折れて鼻血が出る程度に勢いは弱めていた。
にっくきマルコを踏み台にして、また颯爽と逃げ出すつもりだった。

だが。


「よーやく、捕まえたよい」

「は、はなせっ!」


は完全にマルコをなめきっていた。
マルコは腐っても一番隊隊長なのだ。
数字がその強さを決めるわけではないけれど、隊長という肩書は伊達ではない。
真っ逆様に落ちてくる子供の攻撃を防ぐなど造作もないことだった。
片手での足をがっちりとつかんだマルコはにやっと笑う。


「みっちり仕置きしてやるよい。ついでに、立場と目上に対する礼儀っつーもんを教えてやるよい」

「ぎにゃー!」






  
本人いわく、尻を叩かれたそうです
2010/09/17