お子さま行進曲



夜中、何かが耳に聞こえて目が覚めた。
起きあがると、もこりと自分の横の布団が盛り上がっていた。
いったいいつの間に忍び込んだ、との技術の無駄遣いに呆れる。
が隣で、マルコの布団にもぐりこんでいた。

は部屋の準備が整って、つい先日、一人部屋になったはずだ。
これ全部の!?とはしゃいでいたのが記憶に新しい。
ベットに喜んで、クローゼットに隠れたり、小さな部屋を駆けまわって嬉しそうにしていた。
それでも、時折はこうやってマルコの部屋に忍び込んではそこで眠っている。
他にもオヤジの部屋に行ったり、サッチや他の隊員の所にもたまに行っているらしい。
船に乗ったからには子供じゃなく白ひげ海賊団の船員なのだから、一人で寝ろと何度も言った。
でも、きかない。
子供だから人恋しい時もあるだろうし、今のうちは好きにさせているが、そのうちもっときつく言うつもりだ。
一人部屋の意味を、もっと知るべきだ。

今夜はもう来てしまったのだから仕方ないと寝なおそうとした時、すん、と布団の下から聞こえた。
すんすんと、不規則に聞こえる。
訝しがったマルコが布団をめくってを見て見ると、が泣いていた。
眠ったまま涙を流し、すんすんと鼻をすすっている。
が泣くこと自体は珍しくはないが、こうして静かに泣いているのははじめてだった。


「……………………」


聞き取れないが、時々寝言も言っている。
この時になって、ようやくマルコは思いだした。

はまだ子供で、故郷と突然の離別を受け入れたばかりなのだということを。

家族はいないと言っていた。
でも、は最初、どうしようとしていた?
大人で、どう考えても勝ち目のない自分を押し退けてでも帰ろうとしていたじゃないか。
泣いて喚いて押さえつけられても、城に帰ると言っていた。
今でこそ笑いながらモビー・ディック号で暮らしているが、本当は、帰りたいのだろうか。
考えて見れば、この小さな子供は自分の故郷に、自分の国に、帰りたくないわけがない。
帰る場所があるんだから、帰りたいに決まってる。

マルコはを手放す気はない。
が気に入っているという自覚がある。
気に食わなかったら、いくらオヤジの命令だろうとこんなによく面倒は見ない。

には申し訳ないが、もう帰る手段は見つからないと思っている。
もしもが帰りたいと言うなら、その腕を引く。
さみしい思いをさせるかもしれないし、危険を伴う世界だけど。


「泣く必要がなくなるくらい、一緒にいてやるよい」


マルコは布団の中で丸まっていたを自分の上に乗せ、その上から布団をかけた。
それからぽんぽんと背中を叩きながら、マルコも目を閉じた。
とめどなく流れてくる涙がマルコの素肌を流れる。
の体温が、温かかった。






  
寝言は適当に、長とか輝宗様だとかと思う。
2010/10/28