お子さま行進曲



あむあむあむ、がつがつ、ごっくん。
もぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐもぐ。

はびっくりするくらい食欲旺盛だ。
その割に食べている量は一人前程度の量だが、それでも他の男連中に引けを取らない勢いでがっつく。
がっついて、こぼす、こぼす、こぼす。


「おいクソガキ、お前はマナーっつーもんをしらねぇのかよい」

「もふもふもふもふ!」

「わぁった、俺が悪かった。口に物入れたまま喋んな」

「もふっ!」


皿まで舐めんばかりの勢いで、は食事を続ける。
スプーンもフォークもナイフもうまく使えないが、ハシとかいう棒は器用に使っている。
イゾウしか使わないようなものが、こんなところで有効活用された。
しかし、いつか他の食具の使い方も教えないとなぁとマルコは思った。
まぁ男所帯の海賊船でマナーだのうるさくいうつもりはないが、それにしたってこれは酷い。
口の周りは食べカスだらけだし、服にもこぼしている。
シチューなんかハシじゃつかめねぇってマジで皿をなめている。
意地汚い。
これまで貧しい食生活を送ってきたことには同情してやろう。
だがしかし、これはいくらなんでも酷過ぎるだろう。


「ふはっ!サッチ、きょうもごはんおいしい!」

「そうかそうか、たらふく食え!食って早くデカくなれよ!!」

「もふもふもふ!」


話し終えないうちに、またがつがつがつがつ。
いい加減見苦しいので、マルコはテーブル横にあった紙ナプキンでの顔をぐりぐりと拭いた。
ふごふごと抗議の声が聞こえたような気がするが、黙殺。
力強く拭いてやれば、綺麗になるし反抗できないし一石二鳥だ。


「もがー!なにをする!!」

「動くなよい、綺麗にしてやってんだろ」

「うぐぐぐ」

「ほら、もういいぜ」


強くこすりすぎたのか、頭をぐらぐらと揺らされたはおわーと目を回していた。
最後にもう一度の顔を見ると拭き切れなかったシチューが鼻の頭についているのが目に付いた。
紙ナプキンはもう丸めてしまったし、新しいのを取るほどでもない。
人差指でぐいっとぬぐってやった。
そこではっと目覚めたが叫ぶ。


「それの!!」


言うが早いか、行動に移すのが早いか、が釣れた。
強いて言うなら、がマルコの人差指に食いついた。


「っ、ば、おま、何やってんだよい!?」

「もにゅもにゅもにゅ」

「!!」


これはあれだ、違う。
違うんだ、の柔らかい舌が動いて気持ちよかったとか、断じてない。
小さい乳歯が絶妙の力加減で食んでいるとか、口腔内が生ぬるくて、ぬめっていて、舌がもごもご柔らかくて。
違う違う違う、兎に角違う、何か違う。全てが違う。
大急ぎでの顔面をつかんで指を引っこ抜くと、ちゅぽんといい音がしてよだれが糸を引いた。


「マルコ、びみなりや!」


思いっきり拳骨をしておいた。
一刻も早く、テーブルマナーを教えようと決意したマルコ、どぎまぎするのは歳は関係ないと知った今日。







  
不覚にもちょろっと欲情したおじさん。
2010/10/04