
お子さま行進曲
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の診断を任された時、船医はある程度の予測はできていた。 一番隊隊長は風邪か何かかもしれないと言っていたが、現在は春島の近く、気候は安定している。 食欲不振、集中力の低下、子供の来た時期を照らし合わせれば、答えは一つ。 「、だったか。お前さん、故郷が恋しくはないか?」 ホームシック。 それが船医の導きだした病名だった。 船医はその場には居合わせていなかったが、子供が空から落ちてきたことはモビー・ディック号のみんなが知る所だ。 帰る場所があるにもかかわらず、戻る事が出来ない。突然の別れに、こんな小さな子供が耐えきれるわけがない。 家が恋しい、家族が恋しい、友達が恋しいと言ったところだろう。 元気に振舞っていても、所詮は子供。 心のどこかで寂しがっていても不思議ではない。むしろ、寂しがるのが普通だ。 念の為ベットに寝かせられているは、ぱちりと瞬きを一つして、すぐに答えた。 「べつに?」 「大人ばかりでこの船はつまらんだろう」 「んーん。いつもおとなばっかりだよ」 「隊長殿もよく面倒見ているが、親の方が優しいだろうな」 「、おや、いないよ!」 元気よく、答えが返ってきた。 なるほど、と船医は新しく作ったのカルテに孤児と言う文字を書きくわえた。 親がいないのなら、ある程度未練も少ないだろう。 親がいないと断言してしまえる関係は想像するに容易い。 育ての親がいるはずだ。それなのに、親と言う存在はいないときっぱり言った。 それはつまり、親と認識できない大人に育てられたと言う事だ。 子供とはいつの世も愛されるべき存在なのに、とため息をつく。 「故郷では何をして遊んでいた?」 「んー、あそぶ。あそぶこと、たまにな」 「家の手伝いでもさせられてたのか?」 「まえはしゅぎょーで、いまはしごと。あとはたんれん」 どうやら、思っていた以上に過酷な状況下にいたらしい。 家事手伝いを一挙に任せられ、さらには日銭稼ぎにでも出されていたのだろうか。 だとしたら、モビー・ディック号にやってきた事で解放され、気が緩んで疲れてしまったのか。 まだ小さな子供なのに、理不尽な事をする大人もいたものだ。 しかし、たんれん?鍛錬の事だろうか。修行と言う言葉も引っかかる。 「何の修行を、していたんだ?」 「忍びのしゅぎょうだよ」 忍びとは、忍者の事だろうか。 確か新世界のなんとかという国にそういった輩がいると聞いた事がある。 後で調べてみるか、とカルテの欄外に忍とメモをする。 「忍びは、どんな事をする?」 「あんさつ?」 ← □ → 2011/02/05 |