お子さま行進曲



「あの子供は、作られた子供だ」


船医はカルテに目を落としながら言った。
作られた子供、とはどういう意味だろうか。
船医に呼び出されたマルコは船医と向かい合うように座っていた。
カルテを見ながら、船医は眉をひそめたまま続ける。


「人殺しの道具として、作られた子供だ」

「どういう意味だよい」

「そのままの意味さ。殺すことだけを目的に育てられた子供だよ。人を殺すことだけを教えられ、殺すことを日常とされてんだ」


の話を聞いた船医は、そう結論付けた。
孤児であるは忍びの里に拾われ、育てられた。
人を殺す方法を会得し、戦術を学び、ただ従順であるよう躾けられた。

人間として扱われず、道具として育てられた子供はどうやって生活していたのだろう。
子供の話しの端々に出てきた言葉をつなぎ合わせる限り、過酷な環境下だったのは確かだ。
常に命の危険にさらされ、たまの休みも鍛錬に勤しむという。
朝も昼も夜もなく命を賭して働くというのは、どういう状況なのか。
本人は城の人たちと遊んでいたなどとも言うが、そんなものは本当に僅かの時間だろう。


「わかるように説明しちゃくれねぇか」

「そうさな。生粋の仕事大好き人間に、急に暇をやるから遊べ、といったら遊び方がわからんで困惑する。その困惑と仕事をしたという不満がストレスにつながる。そのストレスが心身に影響する。ここまではわかるか?」


は忍びとして生きることを宿命づけられた子供だった。
気付いた時には忍びの里にいて、周囲の子供たちと同じように忍びとしての技を教え込まれていた。
いつだったか伊達の城主の目にとまり、嫡男の影として雇われた。
そうして伊達で日々を過ごすうちに、何を間違ったかこの世界に落ちてしまった。
以上がのこれまで生きてきたすべてである。
もちろん船医が伊達の城や忍びの里など詳しいことは知らないが、おおよそ立てた筋道は間違っていない。


「あいつのストレスったァ、なんだ」

「人を殺せないこと」






  
2017/08/27