
お子さま行進曲
|
それからちょこちょこと船医のもとへ通うよう言われたは、10分15分船医と話し、時折茶菓子をもらい、仕事へ戻る。 菓子がもらえると喜んで通っていたが、送りだすマルコの心境は複雑だった。 “はまだ子供だから、これからの生き方次第でまっとうな人間に戻れる可能性もある” “だが、ここは海賊船だ。人殺しを是とする集団だ” “殺しを厭わねぇ子供が、人殺しの中にいる” “あの子供は、は平気で人を殺すぞ” そもそも、海賊船で子育てなんてちゃんちゃらおかしな話だったのだ。 教養なんてない、道徳もない、大よそ正しいとされることが存在しない。 あるのは無秩序と混乱と暴力だけだ。 そんな中で子供を一人、まともに育て上げるなんてそもそも無理な話だった。 だから途中何度か、平和そうな島でを降ろそうという話もあったが、降ろして置いてきたところで毎回いつの間にかモビーディック号へ戻ってくるので、その話は自然となくなった。 “だがな、あいつが落ちてきたのがウチでよかったとも思う” “殺し屋の子供が、もう普通の生活に戻れるワケねぇからな” “何かの拍子に人を殺して、恐ろしい子供だと逆に殺されるかもしれない” “に殺しを止めさせることはできる。だが、殺しをさせてやることもできるんだ、この白ひげ海賊団では” マルコ!と飛びついてくるを抱き留めてやれば、きょーはこれもらった!と嬉しそうに茶菓子を見せてきた。 嬉しそうに笑う顔はどこまでもただの子供なのに、この手は血に染まっているという。 この笑顔のまま、この子供は人を殺すという。 とても信じられない。 は明るく、いつも元気でどこまでもバカな子供だ。 そんな子供が人を殺すなんて、正直ゾッとする話だ。 「、お前さんは人を殺せるのかよい」 好奇心と言うよりも、否定してほしいという願いで訊ねた問いに。 「だれをころしたい?」 きょとんと瞬くが、如実に答えを物語っていた。 ← □ → 2018/03/26 |