お子さま行進曲



「はーい、入っていーよー」


とんとんとノックをして、きちんと家主の許可を貰ってからエースはドアノブに手をかけた。
がちゃっとノブを回し扉を開いての部屋の中に入るが、肝心の家主は見当たらなかった。
そんな広い部屋ではなし、声がしたからにはどこかにいるだろうと部屋を見渡した。
…汚いというより、散らかっている。
本が開きっぱなしで放置されていたり、あけっぱなしのインクが干からびていたり。
そこかしこに服が脱ぎ散らかしてあって…下着くらいはちゃんとタンスに仕舞えよ!!!
ベットに腰掛けようと思えば、シーツも布団もぐちゃぐちゃで。
に女を求めるのは間違っているけれど、女としてこれは酷いだろうとエースでも思った。


「はいはーい。お待たせー」

「お前なぁ、ちったぁ片付け…!?」


部屋の奥から登場したは、パンツだけはいて、タオルを肩にかけただけの恰好だった。
ぶっと何かを吹きだしたエースは、掌で口を覆う。
間違っても眼は隠さない。


「ごめんねー、シャワー浴びてたからさー」


からからと笑うの顔よりも下に目が行ってしまうのは、いかがなものか。
部屋に備え付けのシャワールームがあるからって!!
ぽたぽたと髪から雫が流れ落ちて、肩を滑って平らに近い胸を流れて…いや、男としてそこは目をそむけてやるのが優しさというものであって!
しかしながら、どんなに貧相でもやっぱり胸に目が行くのが男であって…。
が動く度にちらちらみえるものに、やはりちらちら目線がいってしまう。
白い腹とか、パンツとかパンツとか。ローレグの水色だった。
足を流れ落ちる雫が、扇情的に見えなくもない。いや、見えない見えない。見てどうする。相手はだ。


「あー、その辺てきとーに座っていーよ」

「い、いや、その前にお前…服着ろ、服!!」

「…忘れてた。そっか、エースだった」


今気付いた!と言わんばかりの顔で、は自分が裸に近い恰好なのを思い出したようだった。
自分の恰好を見て、顔をあげるとまたへらりと笑う。


「まぁ、いっか」


よくないから!というエースの声は、届かなかった。
ぼすっとベットの上に座り、胡坐をかいてなーにーと声をあげる。
ベットの上はまずい。あと胡坐もよろしくない。
いい加減何かを試されているのかと思い始めたエースは、考えることを諦めての横に腰を下ろした。
元々用事があっての部屋を訪れたのだし、とっとと用事を済ませて部屋を出ようというのが結論だった。


「サッチが食糧庫のことを―――」

「んー?」


首をかしげた時ふわりと香るせっけんの香りとか、空気から伝わってくる風呂上がり独特の熱気とか。
血気が良くなってうっすらピンク色の肌だとか、しっとり湿って火照った身体だとか。
肩が触れそうで触れない、もどかしい距離とか。


「エースどした?」


覗き込まれた顔が、存外近かったとか。
ちょっとエースからも、近づいてみてベットについていた手が触れ合って。
思わず下にあった手を握り締めて、互いの顔の距離がこれ以上なく近づいて、あ、目ぇ丸いな、とかなんとか思っちゃった時だった。


「あ、マルコ」


声が聞こえた瞬間、エースの視界は暗転。
というよりも、顔を掌で覆われて強い力で押されてベットの上に倒れ込むかと思いきや壁に頭をぶつけた。


「お前は、人前では服着ろって何度言ったらわかるんだよい!!」

「えー、エースだからいいじゃん…」

「ダメに決まってんだろ、バカ!!」

「いったぁ!?殴んなくてもいーじゃんか!!」

「とっとと服着ろつってんだろい!!」


ちかちかと星が回る視界で現状を見てみれば、がいて、マルコがいた。
あれ、さっきまでいなかったような?
を見てみると、頭を押さえながら渋々と行った様子で椅子に掛けて合ったシャツを羽織っていた。
…さっきまで自分は何をしていたか。
わからない、何も覚えていない。むしろ思いださない方が幸せってこともある。
なんだかものすごく後悔の念が突き上げてきた所で、マルコがこちらに向き直っていた。


「で、エース。お前は何をしてた」

「………サッチが食糧庫の備蓄がどーなってたかに聞いてこいって」

「な に を し よ う と し て た ?」

「な、なんも…」


がしっと頭を掴まれた。
そのままじわじわと力を入れられて。


「いででででで!?」

「こういう状況だったら出ていくのが普通だよい」

「わ、悪かったって!!!悪気はなかったんだって、マジで!!!」

「近頃のガキときたら…とんだ常識知らずばっかりだよい」


人の部屋にノックもなしで入ってくるような大人に言われたくないと思ったエースだった。
あと、あれは一時の気の迷いで健康的な青少年なら仕方ないと心の中でだけ弁解したエース。
に欲情とか、ありえない!
いや、うん、マジで、ありえないから…と誰に言うまでもなく、自分に言い聞かせた。







  
せっかく蜜屋さんからのリクなのに、存外普通になってしまった…。
マルコ→主人公にかまってもらおうとやってきたはいいものの、先客がいて<○><○># だと思う。
2010/11/29