お子さま行進曲



「ち、ちちち、ち、違う、もんね!」

「違うよ、違う違う!」

「す、すきなひとだなんて、そん、にゃ!!」


ムキになって否定する姿は、いっそ素直に肯定するよりも赤裸々に本音を語っている。
この手の事があまり得意ではないエースでさえ、の内情が手に取るようにわかった。
顔を真っ赤にして、必死にそれを隠そうとする姿は誰がどう見たって、恋する乙女だ。
日頃のバカで騒いで笑っているの初めてともいえる女らしい部分を見て、こいつも一応は女だったんだなぁとエースはを再認識した。
ぐっと肩を組んで顔を近づける。
もぎゃー、とわけのわからない悲鳴が聞こえたが、聞こえなかった。


「で、誰だ?」

「へ?」

「名前、言ってみ?」

「い、言えないっ!!む、むむ、むりだよ!だめ!!!」


ぶんぶんと顔を振り手を振り、照れて恥ずかしがって隠し通そうと知る
けれど、隠し事が出来ないのもまたなので、エースは再度尋ねる。
喧嘩相手であり、一番歳の近い仲間であり、親友だ。
応援してやってもいいし、にふさわしい男かどうか判断してやるのも友としての仕事だろう。
腕の中でじたばたもがくをものともせず、エースはにやっと笑った。


「ほら、俺ら親友だろ?」

「あ、あう…」


は頬を赤く染め、瞳を潤ませぷるぷると震えている。
どこのどいつが、乙女心とは無縁だったどちらかといえば男らしかったをこんな乙女にしたんだ。
やっぱりちょっとっぱかし、殴ってもいいかな。


「え、とね、その、あ、の…だ、誰にも言わない?」

「そりゃわからん」

「エースには言わない」


なかなか意固地な態度に、エースはぴんと閃いた。


、四番隊隊長は誰だ?」

「?サッチだよ」

「十六番」

「イゾウ」

「船長」

「オヤジ様っ!」

「俺は?」

「エース!」


「お前の好きな奴は?」

…………うっぉああああ、危ない!言いかけた!」


慌てて自分の口をふさぎ、きっとエースを睨みつける。
バカ正直ななら引っかかると思ったが、惜しかった。
バカなりに多少は賢くなっているのか。


「エースのバカっ!言うとこだったじゃんかぁ!!!!」


ぷいっとそっぽを向き、するりとはエースの腕から脱出した。
そのまま逃げ去るかと思えば、一度振り返ってべーっと舌を出す。
そして今度こそ本当にモビーの甲板へと駆けて行った。


「ま…ねぇ。んなの、一人しかいねェじゃんか」







  
2010/12/05