
お子さま行進曲
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最近、の様子がおかしいのは船内の誰しもが知る所である。 噂によると、陸の男に恋しただとか船内の誰かと駆け落ちを目論んでいるだとか、果てにはついにオヤジと結婚式をあげるだとか。 とにかく、に対する色恋の噂が絶えない。 どこからそんなデマが流れだしたのか、真意は本人に問いただすしかないのだが、その本人が捕まらないのが実情だ。 からマルコに近づくことが極端に減ったし、呼べば来るもののすぐに消えるように逃げる。 そのくせこちらをよく見ている癖に、振り返るとまた逃げる。 恋をしているからなのか、別の理由があるのか。 おかしいことだけは確かなのだけれど。 「おい、お前俺になんか隠し事してねぇか?」 「し、してないよ!?」 「こっち見ろ」 「もにゃっ!」 食堂でサッチと夕食を食べていたところに押しかけた。 飯時が一番、が油断している時だ。 急いで飯を掻っ込み逃げ去ろうとするの肩を抑え、もう片方の手で顎を掴んで無理やりこちらを向かせる。 は逃げられないと悟ったのか、悪あがきと言わんばかりに視線だけは明後日の方向を見ている。 というか、サッチの方か。 助けを求めるかのように、サッチを見てサッチを呼んでいる。 そういえば最近、やけにサッチとつるんでいるのを見るような気がする。 「しゃっひ!しゃっひ、ひゃふへへ!」 「マルコ、離してやれ」 なんだ、なんでサッチなんだ。 サッチもサッチで訳知り顔で言ってくるものだから、なんだか腹が立つ。 どうしては自分を避けるのか。どうして自分よりもサッチを頼るのか。 いつの間にか睨んでしまっていたらしい、サッチが若干焦ったように口を開く。 「あー、マルコ。悪かった」 「あ゛?」 思いのほか、低い声が出てしまった。 手が緩んだ隙に、が逃げる。 「にお前に近づくなつったの、俺なんだわ」 ← □ → 2010/12/27 |