「てき、めーっけ」


言うが先か、がくないを真横に滑らしたのが先か。
あるいは、佐助がを掴み投げたのが先か。
奥州の屋根裏の何処か―――もちろんは場所をきちんと把握している―――で、二人は出会った。


「っぶね」


いつのまに背後を取られたのか、まったくわからなかった。
気がづけば声がして、首元にくないが当てられていて。
辛うじて避けたと思ったら行きつく島もなく、くないの二撃三撃が襲ってくる。
それを弾きながら佐助は冷静に敵を見据えた。

上田城城主に命ぜられ、奥州の兵力を見に来ていた。
本来ならば誰にも見つかる事なく、そっと視察し帰るだけだったのに。
見つかるほど、大袈裟な忍務ではなかったのに。
不覚としか言いようがない。
偵察中に後ろをとられ、首を刎ねられかけるだなんて。

声の高さと先ほど背に感じた重さからいって、相手は女か子供だ。
今は暗闇にまぎれてはっきりと視認はできないが、おぼろげに見える姿は小さい。
くないを出して応戦するが、反撃の隙が、ない。
飛んでくる獲物を討ち落とすだけで精いっぱいだ。
それもおそろしく正確に人体の急所ばかりを狙ってくる。
ち、と舌打ちをした瞬間だった。
身体に大きなものがぶつかって、腹部からぶつんと何かが刺さる衝撃があった。
一瞬のち、ぴいい、と大きな音がした。
すぐに応援を呼んだのだと気付いた。






 □ 
2010/09/15