は部下を持ったことがないわけではないが、コビーのように小さくて下級の部下は初めてだった。
とりあえず連れて歩いているけれど、ぶっちゃけどうしたらいいのかわからない。
自分が幼かった時どうされたか思い出してみたが、疑似戦闘と勉強を繰り返しているうちに軍に慣れていった記憶しかない。
ガープと殴り合い、ボルサリーノに蹴られ、クザンに組み敷かれ、サカズキに能力者との戦い方を教えてもらった。
おつるには礼儀作法とマナーを叩き込んでもらって…これは厳しかったなぁと過去を懐かしむ。
かといって、それらをこのコビーにやらせるには無茶な気がするし、どうしたものか。


少将、お茶をお持ちしました」

「ん、あぁ、ありがとう」


書類の上に万年筆を置き、すっかり自分のものとなったサインを見る。
これも最初は書けなかったなぁ、と新入りのコビーを見ていたらなにもかも懐かしい。


「コビー、貴君は何を目指して海軍に入った?」


が海軍に入った理由は、それしかなかったからだ。
ガープが入れと道を示した、それに従った。それだけだ。
元より規律に縛られるのは慣れていたし、上下社会も得意だ。
戦うように育てられていたし、嫌いではなかったから苦にならなかった。
いつからか自分の中にも正義の心が宿り、今では正義の為にという信念のもとにいるけれど。


「僕は…その、憧れている人がいるんです」

「海兵か?」

「えっと、その…」

「言え。別に誰だろうと咎めはせん」


ちらちらとこちらを窺うように見るコビーに言ってやると、おそるおそると言った感じで口を開いた。


「海賊、なんですけど…」

「コビーは面白いことを言う。憧れの男を殺したいのか?」

「い、いえ!ただ、同じ立場に立ちたいんです」

「なぜ?同じ立場なら海賊になればいい。海軍ならば敵同士だ」

「僕は、ルフィさんを超えたいんです。あの人は僕の憧れであると同時に、超えたい壁なんです」


普通にいい話だなぁ、とか思ってたら、おい今めちゃくちゃ馴染みのある名前が聞こえなかったか。
嬉しそうに話すコビーを見て、んん?と首をひねる。
そんなの様子をどう思ったのか、コビーはあはは、と俯いた。


「おかしいです、よね。やっぱり。海賊が憧れだなんて…」

「いや。それは別にいい。己の有する正義こそが絶対なのであって、誰を崇拝しようと、仕事に差し支えなければそれは自由だ」

少将…!」

「聞き間違いだったら悪いが、今ルフィとか言わなかったか?」

「そうです、ルフィさんが、僕の憧れなんです!」






あのアホたれは一体何をやらかした!!!
  
2010/11/19