クロロは のナイフを避けながら、どうしてやろうか、と考えていた。
考えるといっても、 の腕が大分良くなってきたので実際きちんと思考をまとめられるほどの考えも浮かばないのだが。
そうやって考えていたら、ナイフが眼前を掠る。

本人はまだ自分がクロロより弱いと悲観していたが、実際強くなったとクロロは思う。
比べる相手が自分だから の方が劣ってしまうのは仕方のないことだ。それだけ、自分は強い。
実は出会った当初も は強かった。
武術に長けていたし、長い体躯を十分に生かし広範囲の攻撃を得意とし、それに体重を加え重く速い攻撃。
武人としたら、さぞ強かっただろう。
けれどどこか型に則った正攻法な攻撃は避けるのが容易く、崩すのも安易だった。
そう、簡単だったはずなのに、クロロは幾らか攻撃を食らい、ダメージを受けていた。
それだけの使い手だった。

自分に教えを乞うたので、気紛れに迎え入れた。
そして、望まれたものを叩きこんだ。武芸ではない、喧嘩を。
頭突きに肘打ち膝蹴り急所狙い、砂掛け不意打ちなんでもありだ。
あはは、卑怯だねー、なんて笑いながらも、 は素直に従った。
型にこだわるかと思えば、なんてことはない。不意打ちも闇討ちも楽しそうにやってのけた。
鍛錬を開始してすぐ、 の綺麗だった武芸は崩れ、滅茶苦茶な単なる喧嘩になってしまった。
まぁ、本人が望むとおり強くなったのだから良しとしたいが、あの流れるような武芸がもう見られないと思うといくらか残念な気がした。

念を知らないというので、教えてやった。
合気道なるものをやっていたらしく、力の流れ、気の流れを知っていたので精孔を開いてやると、オーラをとどめることがすんなりできた。
それからが少し難儀したが、なんとか四大行は覚えることができた。
応用技になると酷いもので、硬や流は適当、円は綺麗な円ではなく歪な楕円形。その最長部は3メートルになるが、最短部はわずか1メートルにも満たない。
かろうじで周だけはなんとか実戦でも使える程度。
成長の限界である20歳で修練期間が一年という短時間にしたら、よくやったほうといえるか。



ばきっ

がっ

さっ



の拳が肩に当たり、体制が崩れたところで掌底が決まり、腕にナイフがかすった。
しまった、何故か思い出に浸ってしまっていた、とクロロは現在に戻ってきた。
防戦一方でこれまで凌いできたが、ナイフを持ったことにより のテンションが上がり、尚且つ体も温まってきたんだろう。
考え事をしながらでは捌き切れなくなった。
クロロはナイフがかすった箇所を確認し、少し切れただけという事を知る。
まだ が念での攻撃を仕掛けてこないので練をしていなかったが、そろそろした方がいいかもしれない。
万が一にもナイフが刺さったら、痛い。それは嫌だ。
何故高々 との遊びごときで後々まで響く怪我を負わにゃならんのだ。
練をしていたらナイフで刺されることはないだろうし、逆にナイフの方が痛む。
が念を使うまでは、と思っていたが、そこまでの余裕はなさそうだ。
武器はずるいだろう、とため息をついたところで、オーラを練る。



「あ、やっとクロロがやる気になった!」

「あのな、お前はこの俺に遠く及ばずながらも一応は強いんだ。生身と武器とじゃこちらが怪我をする」

「ふふ、うふふふふー!クロロにそう言ってもらえると、ボク頑張ったかいがあるよ!」



は喜色を浮かべ、ナイフを構えなおす。
それと同時に の体がオーラに覆われるのを感じる、クロロは凝を使わずともそのことがわかった。
更に凝を使ってみれば、ナイフは周によって覆われていなかった。
が、それはクロロが念を使う前の話で、こうして構えなおしている間に周によって覆われた。



「念ね、だいぶ覚えたよ」

「覚えていても使えなければ意味がない」

「大丈夫、とりあえずは使えるようになったから」

「はっ。その程度でか」

「この程度でも、クロロを殴れたら十分だよ!」







2009/03/04