荒い息遣い、傷だらけの身体。
先に地に付したのは紛れもない、だった。



「弱いな、話にならない」

「だって、ボクは、強くなるために、此処に来たんだもの」



痩せ細った地面に仰向けに倒れ、胸を上下させる。
息が切れたのはいつぶりだろう。
身体中の痛いという悲鳴を聞いたのはどれほど久しぶりだろう。
矢張り、自分はまだまだ弱い。
は盛大に笑った。



「あはは、はは、あははは!来て良かった!ボクは此処に来て正解だった!!」



突如笑い出したに、クロロは怪訝そうに顔をしかめる。
額から流れ落ちる汗を拭い、裾の至る所が破れ、裂けた黒いコートが風に棚引く。
と比べればクロロは大した事ないが、それでも疲労の色が滲んでいた。



「可笑しな奴だ、甚振られるのが趣味なのか?」

「ふふ、そうかも知れない。クロロは甚振るのが趣味?」

「あぁ、かも知れないな」

「じゃぁ、ボクらはサディストとマゾヒストで相性ばっちりだね」



尚も笑い続けるに釣られ、クロロもついつい微笑んでしまった。
可笑しな話だ、と思う。
先ほどまでは生死を賭けた死闘を繰り広げていたのに、今はこうして笑っている。
倒れているに止めを刺そうという気は起きなかった。

何者なのだ、このという人物は。
突然ホームに現れ、異質な雰囲気を纏っていたので団長である自分が出向いた。
最初は自分たちを狩るブラックリストハンターかと思ったが、そうでもないらしい。
旅団である自分たちのことを知らなかったのだ。
戦いたい、という事だったので戦ってみれば念能力者でないことが判った。
念能力者でないのにも関わらずA級賞金首である自分たちに戦いを挑んできたことに呆れたが、その考えは一瞬で払拭された。
念能力など使わなくとも強かった。
いや “強い” と言うのは一般的に評価したまでで、
自分たちと比べれ “普通” に分類される。
決して弱くはないのだが、どうしても自分たちと比べると劣ってしまう。
それでも、念能力を使わずに此処まで戦えるとは賞賛に値した。
だからこそクロロ自身も念能力を使わず、自身の技と力だけでと戦った。
闘って、久しぶりに強いと感じる相手に出会えた。

自分の足元に倒れ、笑っているこの
どことなく不思議な雰囲気を纏うに、興味を抱いてる自分がいる。



「ねぇ、クロロ」

「なんだ?」

「お願いがあるんだけど、いい?」

「あぁ、幸いにも俺はお前が気に入っているからな。気が向けば聞いてやらないこともない」

「クロロって良い性格してるね、言われない?」

「今はそんなことどうでもいいだろう。で、なんだ、その願い事は」

「ボクを強くしてくれない?ボク、強くなりたいんだ」



思っても見ないの発言にクロロは軽く驚いたが、どこか喜んでいる自分がいることに気づき心の中でほくそ笑んだ。
クロロは倒れているに手を差し伸べ、立ち上がらせる。
泥にまみれ、ボロボロの
そんな姿なのに至極嬉しそうに笑っているので、みすぼらしさは欠片もない。



「俺の修行は厳しいぞ?」

「強くなりたいんだ、厳しいくらいが丁度いいよ」



クロロはをホームまで連れ帰った。







2006 07 02

  

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