がしゃん、ぱり、ばりん。
王子の発作が起きた。
「はぁ、はぁ、はっ」
「まーたやらかしたの?あーあ、この鏡高かったのに」
「っふぅ、ふっ、はぁ」
明らかな興奮状態。
王子の目の前には砕け散った鏡。
手で叩き割った所為で、拳に破片が刺さり、裂け、血がしとどに流れている。
は現状を見て、溜息をついた。
「ヒステリーに付きあわされるこっちの身にもなってよ、疲れるったらありゃしない」
「この顔、同じ顔、この顔がッ!!」
割れた鏡の破片と手に取り、手が切れることも厭わずそれを握り締めた。
王子は鏡を見るたびに憤り、鏡に向かって殴りかかる。
それは瀕死でに拾われてきた経緯にあった。
王子は、双子の弟に殺されかけた。
自分とまったく同じ顔の弟に、ナイフでめった刺し。
覚えている最後の言葉は、
『ゴキブリと間違えたよ』
その件があり、王子は鏡に移った自分の顔を弟だと思い込み、錯乱状態に陥る。
憎くて、恨めしくて、殺してやりたいほど忌々しくて。
「アイツの所為なんだよ!全部全部アイツの所為だ!!あは、あはははは、あははははは!!!」
こうなったが最後、王子は見境がなくなる。
目に付くものを破壊し、人がいれば襲い掛かる。
もちろん、とて例外ではない。
今まさに、王子はに襲いかかろうとしていた。
「死ね、死ね、死ねッ!お前が死ねば全て上手くいくんだ!!」
「お黙り」
低く、地の底を這うような唸る声。
ぴたりと王子の動きが止まった。
「お前が、お前の所為で・・・」
「うるさい」
「・・・殺してやる・・・・・オレを・・殺したんだ・・・・・・・・・・・」
「黙れ、と言っている」
びくりと王子が震えた。
溢れる威厳、零れる殺気、満ちる冷徹、流れるオーラ、漲る狂気。
凍る時間、止まる呼吸、落ちる体液、震える身体、失う生気。
絶対的強者、狩人、捕食者、暴君、覇者。
格下、負け犬、非食者、下僕、服従者。
一瞬で、王子は萎縮した。
そして己の愚を悟る間もなく、崩れ落ちるように失神した。
「まったく、手のかかる王子だ」
倒れている王子を見下ろし、嘆息し、は由紗を呼んだ。
「手に包帯巻いて、部屋まで運んで」
「かしこまりました」
由紗に抱えられた王子は、ぴくりとも動かなかった。
発作は、これから数ヵ月後に漸く落ち着いた。
2006 10 06
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