雲雀に歩み寄ったはてっきり雲雀の横に腰掛けるものだと思ってぼんやりとしていたら、突如目の前が明るくなった。
顔を覆っていた手がによって退けられたらしい。
明るさに慣れない目で自分のおかれた状況を把握しようとしたが、そんなことをする必要も無く眼前にの顔があった。



「子供は素直なのが一番だよ。
 いい?もう一度聞いてあげる。ヒバリはボクの事が好き?」



目を逸らす事が許されない。
強い意志を持った瞳で強制させられているわけではない。
かと言って、手で押さえつけられ無理矢理目を合わせられているわけでもない。
だが、逸らすことが出来ないのだ。
蜘蛛の巣に掛かり、もがく事さえ赦されない蝶々のように。
このの深い色の双方の目から。

ヒバリの口に、鼻に微かに掛かるの吐息。
それほどまでに顔の距離は近い。
緊張からか、無意味なほど心臓がどくどくと脈打つ。
全身に血が回り、肌が火照る。

どうしろというのだ。
好きだ、と言えば満足するのだろうか。
しかし、そんな簡単なことではないはずだ。
相手はあの、一筋縄ではいかない。
きっと、本心で言わなければ意味が無いのだろう。
その答えは決まっている。
雲雀自身の中では答えは一つしかない。



好きじゃない



その一言でこの苦悶から逃れられるのだ。
だが、その言葉が喉の奥に痞えたように出てきてくれない。
脂汗が額やら首筋やらに浮かび上がる。
は尚も視線を絡め、顔を近づけたまま放そうとしない。



「緊張する?こんな至近距離で。
 でも、ボクにキスした時はもっと顔を近づけたんでしょ?」



囁かれる言葉はまるで頭の中に入ってこない。
ぐるぐると回る思想に追いつくのに精一杯で他のことを考える余裕が無い。

あぁ、本当にどうしたらいいのだろう。
つぅ、と汗が流れるのを感じた。







2006 07 27
  

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