珍しく応接室は静かだった。
また授業をサボり、応接室の目の前まで来ていた雲雀はその静けさに不審を抱いた。
普段は扉の向こうから椅子の軋む音や、パソコンのキーボードを叩く微かな音が聞こえてくる。
全てはが応接室で自分の好き勝手に行動しているからだ。
けれど、今日はそれがない。
なんとなく、雰囲気に合わせてそっと応接室の扉を開けた。
応接室に電気は点いておらず、午後の日差しだけで明かりを取っていた。
その明かりの中に居るのは、
ここ最近応接室を自分の私室として好き勝手使っているだった。
いつもなら何らかの反応を示し、声を掛けてくるのが彼だ。
それが今日に限っては何も無い。
の気紛れか、とも思ったが、
それにしては静か過ぎるような気がする。
ぐるりと応接室を見渡せば、いつもが座っている椅子は使用者が居らず、
ぽつりと存在していた。
きっと、出かけたのだろう。
そう思い、雲雀は自分の椅子に座り風紀委員の書類を取り出した。
かりかり、と静かな応接室に筆記音が響く。
外では部活動が始まったのか、掛け声やら応援やらで騒がしくなる。
それらが響く応接室は酷く静かだ。
ここまで静かなのはいつぶりだろう。
最近はずっとが居て、静かとは無縁だった。
・・・落ち着かない。
騒がしいのに慣れてしまった所為か、人の気配がないのが寂しいのか。
自分でも苛々するくらい、落ち着かない。
一体彼、はどこまで自分を乱させれば気が済むのだろう。
「まったく、迷惑を通り越して呆れるよ」
気分が乗らないので雲雀はぽい、と持っていたシャーペンを投げ、立ち上がる。
気分転換に群れている奴らを痛めつけてやろう。
きっと、そうすれば少しは気分も晴れるだろう。
立ち上がると、不意にカーテンがゆらゆらと風に煽られ靡いているのが視界に入った。
なんとなく気になったので、窓を閉めようと窓際へと近付く。
がらがらと窓を閉め、がちゃり、と窓の鍵を閉める。
風はもうない。カーテンもおとなしく静かになった。
今度こそ出かけよう、と思い踵を返そうとした。
すると、先ほど自分が居た位置からは死角となっている場所に、大きなソファを見つけた。
はて、と雲雀は小首をかしげる。
こんな場所にソファなどおいてあっただろうか。
もしや―――
奇妙な感覚が雲雀を襲った。
案の定、が其処に居た。
いや、正確には規則正しく胸を上下させ、
何もかも見透かしたように人を見下している瞳は閉じて、
とても穏やかに眠っていた。
それまで胸の中をぐるぐると渦巻いていた苛々が嘘のように晴れた。
そして、収まったかと思えばまた苛々としてきた。
どうして、自分がこんなにもに乱されているのに、
この男は暢気に、気持ちよさそうに眠っていられるのだろう。
負の感情が雲雀の中で蠢いた。
ぐちゃぐちゃで、自分でもよくわからなくて、とにかく苛々して。
気付けば、の白い首に両手をかけていた。
2006 05 12
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