無防備に、眠っている。
今、この瞬間、その白い首に手が掛かっているのに。
やろうと思えば、即座に力を込めることが出来る。
つまりは、殺す事が出来る。

誰を?

ずっと、ずっと自分を見下して、弱いと罵って、嘲笑っていたを。
彼を、今の自分なら殺せる。
あの、を。
この他の誰でもない、自分の手で。   

脳から神経を伝って、筋肉へと指令が伝達される。
その腕に、指先に、力を込めろ、と。



「やめた」



少し、ほんの少しだけ力を込めたが、直ぐに手を離した。
の首から手を離し、どさりと彼の寝ているソファに座り、頭を抱えた。

違う。
こんな事で優位に立ちたいわけじゃない。
ちゃんとしたフェアな勝負で、力のぶつけ合いで、それで勝たないと意味が無い。
そうしなければ、自分は弱いままだ。



「起きなよ。どうせ最初から起きてたんだろ?」



言うと、の身体が動いた。
ゆっくりと起き上がり、丁度雲雀の横に腰掛ける形となる。
うーん、と伸びをしてから、クランチェスカは横にいる雲雀ににっこりと微笑んだ。



「ボンジョルノ、ヒバリ」

「ホント、ムカつくよね」

「だったらさっき、殺せばよかったんだよ」



クランチェスカは起きていたのだ。
最初から、雲雀がこの部屋に入ってきたときから。
つまりは、眠った振りをして雲雀がどのような反応に出るか試していたということだ。
顔にかかった前髪を掻き揚げながら、くつり、とは笑った。
そう、その笑みだ。
例え本人にその気が無かろうと、どれほど本人が屈託の無い笑みのつもりでも、
その笑みを向けられたものにしては、嘲笑にしか見えないのだ。
ムカつく、ムカつく、ムカつく。
苛々する。気に食わない。咬み殺してやりたい。



「ねぇ、どうしてそんなに嫌な人間なの?」



尋ねればはきょとりと瞬く。



「ボク、そんなに嫌なやつに見える?」

「とてもね」



とてもとても嫌な奴だ。
真正面から勝負を挑んでも勝てない。
裏を掻こうとも自分のプライドが許さない。
卑怯だ、絶対に勝てないようになっている。



「じゃぁ、ボクを好きになってよ」

「僕は君を好きになんかならない。出会ったときからずっと、嫌いだった」



少しだけ嘘をついた。
出会ったときは、歓喜した。
漸く自分と対等に渡り合える人間に出会えた、と。
出会って、別れて、再び再会するまで。
その間も焦がれていた。
本当にまた会えるのか、会えたらどれ程楽しい殺し合いが出来るのか、と。
再会した瞬間は嬉しかった。

それだけだ。
それ以外はずっと、何においても



「嫌いだ・・・」







Buongiorno ボンジョルノ おはよう
2006 05 13
  

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