幾人もの怪我人の上で、被害者の上でと骸は戦っている。
感じるのはエクスタシー。
恐怖や罪悪感などは微塵も感じない。
感じる必要もない。
微かな緊張が自分を高ぶらせる後押しをする。
もう止まらない。
のナイフと骸の三叉が火花を散らしながら交差する。
「おとなしく、やられてはくれませんかねぇ」
「まさか!どうしてこんなに楽しいのにすぐ終わらせようとするの?」
「クフフ、それは僕も同じなのですがね。やらねばならないことがあるんですよ」
「ふーん。ま、どちらにせよそれは出来ないよ。だって、ここでボクにやられるんだからね」
ぱん、との手の中から煙が上がる。
手の中にはPietro Beretta Model 950。
ベレッタの小型銃、ジェットファイア。
それはが手に隠し持っていたもので、銃口は骸の顔に向けられていた。
銃口から上がる硝煙。
骸は紙一重でそれを避けたようで、目を細めながらを見る。
「ふぅ、不意打ちとは卑怯な」
「賢い、って言って欲しいな」
銃が掠った額から流れる血をぬぐいながら、骸はと距離をとった。
「ナイフ使いかと思えば銃を使う。貴方の愛用武器は糸だと聞きましたが?」
「どれも使うよ。あ、でも銃はあんまり使わないな」
骸へ近づこうとしたが、床に倒れていた千種の体を踏みつけた。
次いで獄寺の体を蹴る。
「地獄道」
骸の目の数字が一に変わる。
同時に世界が歪んだ。
崩れ落ちる床、崩壊する天井。
立っているのは、骸。
裂けた床の上に直立する。
「不思議な空間だね。でも、目を惑わせて何の意味があるの?」
何事もないように立っているを見て、骸は笑った。
どうやらに幻覚は効かないらしい。
常に自分というたった一つのものしか信じないにとって、周りの世界がどうなろうと関係ないと思っているのだろう。
それ故に、幻覚など関係なく自分だけの世界を築いている。
幻覚は通用しないと思ったのか、骸は再び目の数字を変える。
「では、こちらなんてどうです?第三の道、畜生道」
毒蛇が召喚され、に群がる。
しかしこれは地獄道よりも簡単に打ち破られた。
蛇がに怯え、早々と逃げてしまったからだ。
正気であれば、誰も今のに近寄ろうとは思わない。
それほど恐ろしかった。
立ち竦んでいるツナがいい例だ。
この重苦しい緊張の中すでに目の焦点が合っていない。
おそらくは息をするのも、心臓を動かすのもやっとだろう。
この場から逃げ出さないのではなく、逃げ出せないのが正しい。
「もう、飽きたよムクロ」
「幻覚で惑わして、動物なんかをボクに差し向けて。それでボクが満足すると思う?」
「さっきの肉弾戦のほうがよっぽど楽しかった」
がっかり。
その言葉が今のには良く似合う。
ひゅ、と何かが骸の頬を掠った。
「終わらせよう。キミが死んで、それで終わり」
いつのまにか張り巡らされていた糸が骸の自由を奪う。
肉眼で捉えられないほど細い糸の先を辿ると、その先にはやはりがいた。
骸は四肢を糸に絡めとられ、完全に拘束される。
身の危険を感じなんとか逃れようとするが、もがけばもがくほど糸が食い込む。
これがbambola。
糸に絡めとられれば最後、もうに従うしかできない。
きり、と締め付けられる。
皮膚の薄皮が裂け、血が滲む。
痛い、という感覚よりも、恐怖が骸を支配した。
死線など、いくらも越えてきたはずなのに。
死ぬ覚悟なんて、いつもしていたはずなのに。
それなのに、どうしても体の底から湧き上がってくる恐怖を抑えられない。
死。
きりきり、と徐々に締め付けられる力が強まっていく。
糸を伝ってぽたりぽたりと血が流れ落ちた。
ピアノ線かワイヤーだかは知らないが、鋭く細い糸は容赦なく骸を傷つける。
四肢が切断される、首が飛ぶ。
鋭利な痛みに意識を持っていかれそうになったとき。
「骸にだけは、勝ちたい!そして、仲間を助けたい!!」
ツナの決意が、図らずとも骸の命を救った。
わかりづらくってごめんなさい。 2007 04 15
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