がバンボラ、殺人鬼、ドン・インペラトーレと名を挙げ、人々から恐れられるようになって早数ヶ月。
その間に紙面を騒がせた17件の殺人事件は、すべてが起こしたものであった。
糸を使って人間をバラバラに切り刻む残虐な殺人方法から、血を好む狂った人間、人を人とも思わない人でなし、殺人を快楽と直結させる変態、殺しを生とする鬼畜生など、様々なイメージを人々に与えていた。

彼がこれらの事件を起こした人物だと知るのは同じマフィア界の人間か、それに属する裏世界の人間のみだった。
世間一般には単なる猟奇殺人、連続殺人、単独事件、マフィアの抗争など様々な見解で見られている。
人々は恐れ戦き、縮こまっていた。

この事件の被害者の多さに頭を悩ませ、政府が頼ったのが哀川だ。
請負人である哀川はたまたま暇だったため、今回の事件の解決と犯人の殺害を請け負った。
誰もが至高だと謳い、人類最強、赤色の請負人。
彼女に掛かれば何が何であれ、どれほど不可能であっても、いかに難解であろうと、哀川が関わるだけで必ず一転する。
それがどう転ぶかはわからないが、彼女に一任するしか今の政府には手段がなかった。



「で、アイカワはボクを殺すの?」

「あん?そうだな、一応殺さなきゃなんねーな。そういう依頼だし」



からり、アイスティーの氷が鳴る。



「ボクはもちろん殺される気はない。けど、アイカワは強い」

「あたしとお前がガチで殺し合ったらどっちも死ぬ」

「どうする?やってみる?もしかしたらボクが勝つかもしんないし」

「やってみっか?あたしが勝って終わるかもしれねーかんな」



にこり、蛇のように相手の自由を奪う絶対の瞳。
にやり、獲物を狙う猛禽類のような鋭い眼光。
視線の交わる場所が硬直し、緊張が生まれる。
けれど一呼吸間をおいて、わはは、と軽快な笑いが店内に響いた。
そして声を揃えて高らかに言う。



「「 冗談! 」」



「ボクが勝つかもしんないけど、勝ったところで腕の一本や二本、目か足か内蔵か、どれか持ってかれてそうだし」

「あたしが勝利の美酒を味わうかもしんねーが、再起不能になってりゃ意味ねーしな」

「うふふ、じゃあどうするの?ボクを殺すのが仕事なんでしょ?」

「んー、お前自殺でもしねーか?」

「まさか!じゃーアイカワがボクにやられたことにしてよ」

「ハッ!それこそまさかだな!!」







(恋と戦争は手段を選ばず)
2008 04 19
  

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