「これお願いねー」
にこやかに手を振って去り行くを恨めしいと思ったのはこれで何度目か。
殺してやりたいと思った数よりは多いはずだ。
王子は深い溜息をついた。
(いつもそうだよ。都合が悪くなったら何でもオレに押し付けてさ、あぁ、あの時もそうだ。
あの時オレ幾つだったよ?確かオレが腹刺された時だから・・・九歳の時か。
ありえねー、まだ十にもなってないガキの頃だぜ?しかも腹刺されて包帯ぐるぐる巻きで、意識朦朧としてて、麻酔が切れた一番最悪なとき。
なんか知らないけど勝手に町のチンピラ寄越してきてさ、なーにが “絡まれちゃった。早く家帰りたいからお願いね” だよ。こっちはまだガキだっつーの。
しかも重症の。相手キれてんじゃん。ナイフとか銃とか持ってんじゃん。当たり前だけど大人だし、複数じゃん。
・・・なんて死ね。本気でそう思ったね。てゆーかオレをもっと労われ。
普通死に掛けのガキとチンピラ戦わせたりする?まぁ勝ったけどさ。腹の傷口開いて縫い直したけど。銃撃たれて腕掠ってそっちも三針縫う羽目になったけど。
殴られて奥歯欠けたけど。そんなズタボロの姿で帰って、なんて言ったと思う? “うっわ、王子どうしたの!?酷いカッコ。あー、まさかあの不良にやられたの?うそ、王子弱い!” 本気でなんて死ね。つーかいつかオレが殺す。絶対殺す。何が何でも殺す。そう思ったよなぁ・・・。ま、今も思うときあるけど。てゆーかマジで勘弁してほしいよなぁ。
結局さ、そん時オレにチンピラ押し付けた理由なんだったと思う?見たいテレビが始まるからだと。信じられないね、まったく。あんた幾つだよ。オレより年上だよな?
んな理由で手負いのガキに喧嘩押し付けんなよ!!あー、思い出しただけで腹立ってきた。ほんと何様のつもりなわけ?
オレだって王子なんだけど?それを言うと、はオレより強いし凄いんだけどさ。ムカつくけどそれだけはかわんねーし。ホントわかんない。
どうしてあんな飄々としてていつも好き勝手してる奴が強いわけ?ほとんど戦わないけどさ。が怪我してるとことか見たことねーし。あーもー、ホントありえない)
「マジでイライラしてきた」
ぐしゃぐしゃと金の髪を掻き乱して、王子は目の前をにらむ。
王子の目の前には、に押し付けられたチンピラが五、六人いた。
いつかと似たような状況。
「オレさ、今すっごく腹立ってんの。だからもう死ねばいいよ」
ばき、と王子は目の前の敵を殴り、ごき、と足蹴にした。
鼻骨が折れて、顎が外れる音がした。
(今度はいったい何の理由でオレに回ってきたの?またテレビ?デート?食事?何かの発売日?気まぐれ?何年一緒にいてもの考えることはわかんない。まぁ、どーでもいいようなくだんない理由なのは確かだけどね。んで、被害を受けんのはオレ。
なんでこんな時に由紗がいないんだよ。あいつ弱いけど、この程度なら相手できんだろ。もだ。いちいち売らなくて良いのに喧嘩売って、気が向けば相手するけどそんなのめちゃくちゃ珍しいし。
売られた喧嘩をばっちり買って、勝てもしないのにつっかかってくるバカな不良の相手はもっぱらオレで。あーあ、オレって損な役回り。
これで相手が強かったりしたらやりがいがあるっつーもんだけど、こいつらてんで弱いし。相手になんない。弱いものいじめって好きじゃないんだけどなー。
一瞬で終わるし、倒したってゆー達成感ないし。束になってかかってきたらまだましなのに、つまんないなー。オレ今日行きたいとこあったのに。
ナイフの切れ味悪くなったから磨ぎ屋だろー、銃の弾も足りなくなってきたし。まぁこれはに言えばインペラトーレの備品っつーことでパクれないこともないんだけど、安物だし。オレの銃に合う弾ねーし。微妙に管理悪いよな。
あー、新しいナイフ出てないか見たかったし、服もこないだ血まみれにしたから新しいの欲しかったんだよなー。のバカ。全部ダメになったじゃんか。別に一瞬で終わらせて行ってもいいんだけど、なんかそんな気分じゃなくなったし)
「こうなったら早く帰ろ」
背後から襲ってきたチンピラの足を払い転ばして、思いっきり踏みつける。
みしり、と骨がきしむ音がした。
呻き声は耳障りなので聞こえないふり。
王子以外に立ってるものがいなくなった。
「はい、終わりー。バッカじゃねーの、あのに喧嘩売るなんてさ。お前らのせいでオレがかつぎ出されたじゃん。あーあ、貴重な時間無駄にしたー」
少し血の滲んだこぶしをぺろりと舐め、両手をポケットに突っ込んだ。
怪我はない。
あるとしたら、相手を殴ったせいでこぶしの皮が少しめくれた程度。
かかった所要時間はわずか三分。
(でもなー、、あれで無駄に顔綺麗だし、スタイルもすらっとしてるけどしっかりした体つきしてるし。見た目だけは無駄に良いんだよな。
ま、オレも見た目は負けねーけど。でも、オレより年下だし、あいつがボスだし、あいつのが・・・バカだけど。子供っぽいけど、性格悪いけど、我侭だけど、天然だけど。
強いし、カッコいいし、オレを拾ってくれたし、底が知れないし、マジ切れした時すげーし、怖ぇし。要するにあいつは凄い奴で、オレはなんつーか、
その、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のこと好きだし?)
(でも、やっぱの相手をオレに任されるのはめんどくさいや)
02頼られるのは嬉しいけれど 2007 03 22
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