基本、王子は自分至上主義である。
それはを見て育ったからなのか、に従う由紗に育てられたからなのかは定かではない。
しかし、絶対他人の言うことを聞かないのが王子だ。



「王子様、失礼ですがドン・インペラトーレからお請けになられたお仕事がまだ残っておられます」

「あっそ。 言われなくってもそのうちやるって」

「ですがドン・インペラトーレが」

「うるさいなぁ。 オレにはオレのやり方があるんだよ」



から暗殺依頼を請けていた王子だが、未だその依頼は遂行されていない。
その為<の部下が王子の所まで催促にやってきた。
だが王子は真面目に話しを聞く気がなく、ナイフを磨いたりしている。
しかし部下もなかなかしぶとい。
あまりにしつこい部下に業を煮やしたのか、王子は磨いていたナイフを投げた。



「っ!!」

「煩いっつってんだよ。今度何か言ったら頭やるからね」

「も、申し訳、ございませんでした」



王子の投げたナイフが腕に命中し、部下は苦痛に顔を歪ませながら一礼する。
その腕からはしとどに血が流れ、絨毯を汚す。
王子はそれでいい、と言わんばかりにまたナイフを一本取り出し磨き始めた。



*



「王子いるー?」



王子の部屋に了承も得ず入ってきたは中央に座る王子を見ると、王子は磨いていたナイフを手元に置きを部屋に迎え入れた。



「どうしたんだよ」

「べっつにぃー。王子の顔を見に来ただけー」



適当にソファーへ座って寛ぐ。
王子はメイドを呼んで紅茶と簡単な茶菓子を出すように命じた。
そしての近くに座る。



「、何しにきたの?」

「だから言ったじゃん。王子の顔を見に来たんだよ」

「ふーん。暇人だね」

「王子は?」

「は?」

「王子は暇なの?」

「あー・・・、ビミョーに」



話題を振られて王子はお茶を濁した。
本当は暇じゃいけないんじゃなかったか。
今はに仕事の依頼を請けていて、でもまだやり終えてなくて。



「ねぇ、ボクが言った事はやってくれた?」

「ボク言ったよね。頼んだよ、って」

「誰が誰に頼んだ仕事だと思ってるの?」



まずい。
これは、もしかして、ひょっとすると、ちょっと、まずい、かもしれない。
王子はから離れたくなったが、動くことが出来ない。



「わ、悪かった、よ。今日中に、始末、してくりゃ、いいんだろ?」



弁明、それが今王子に出来る精一杯。



「当然でしょ?このボクがそう言ってるんだから」



ぎらりと王子に絶対の視線を浴びせ、また視線をそらした。
一瞬の出来事でも萎縮してしまう。
反射的に体が凍る、脳が怯える、本能が悲鳴を上げる。

王子は王子だけれど、は。
王子が頂点に立てるのは、我侭を言えるのは、全てがいない時の話。
がひとたびその前に姿を現せば、それらの権利は全て剥奪される。
幼い頃に叩き込まれた絶対君主。

逆らってはいけない、歯向かってはいけない。
従順に、おとなしく、傅かなければならない尊い存在。
そうしなければ、隣に立つことさえ許されない。
例え家族であろうと、どんなに距離が近かろうと、仲がよかろうと、立場は対等でない。



「王子」

「なに」

「頼んだよ?」



仰せのままに。
王子はただ、言うことを聞くしかない。







03.血なんて関係ない  2007 08 08
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